NATURE IN THE GLASS 「川底眩しく」
細葉のクリプトコリネで開けた水辺の陽光さす川底を表現
[ 川底眩しく ] クリプトコリネ属には多くの種類があり、その生息地の環境も多様である。その中でも細葉系・テープ系の多くは水中に適した形状をしていて、川の流れに乗ってたなびきながら光を浴び生長している。この水景ではそんなクリプトコリネに焦点をあて、ジャングルを抜けた人里に近い土地に流れる河川をイメージしている。水草が茂り、生き物が棲みつくこの場所には、自然の恩恵が凝縮されていることを表現する狙いもあった。

DATA
撮影日 : 2021年3月9日(ADA)
制作 : 岩堀 康太(レイアウト制作・文)
水槽 : キューブガーデン W60×D30×H36(cm)
照明 : ソーラーRGB×1基 1日9時間点灯
ろ過 : スーパージェットフィルターES-600(バイオリオG)
素材 : 流木、万天石
底床 : アクアソイル-アマゾニア Ver.2、 パワーサンド・アドバンスS、 バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2 : パレングラスTYPE-3、CO2グラスカウンターで1秒に2滴(タワー使用)
AIR : リリィパイプP-2によるエアレーション 夜間消灯時15時間
添加剤 : ブライティ・K、グリーンブライティ・ニトロ、グリーンブライティ・ミネラル
換水 : 1週間に1度 1/3
水質 : 水温25℃ pH:6.4 TH:50mg/L
水草 :
クリプトコリネ・アルビダ
クリプトコリネ・スピラリス
クリプトコリネ・スピラリス タイガー
クリプトコリネ・カウディゲラ
クリプトコリネ・パルバ
クリプトコリネ・ルーケンス
クリプトコリネsp. CK
ハイグロフィラ・ピンナティフィダ
ミクロソラム・トライデント
ウィーピングモス
魚種 :
ミクロラスボラ・ブルーネオン
オデッサ・バルブ
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ
たなびく群落の周りで繰り広げられる生き物たちのドラマ

陰生植物のイメージが強いクリプトコリネだが、日光がよく当たる開けた水辺に自生する種類も多い。それらは細長く葉を展開するタイプが多く、今回の水景ではサイズや葉形、色味を考慮して選び背景草に用いている。横幅60㎝という空間ではあるが、広がりや流れを意識できるように構図素材の配置や植栽を工夫している。また、全体的に単調にならないように活着性水草や魚種選択で色彩についても考慮した。川上から流れ着き、苔に覆われた流木や石がつくるわずかなよどみ。さまざまな水草が繁茂するその水域を生活の場とする魚に思いをめぐらせ、豊かな自然を象徴的に表現している。

1.細葉クリプトを使い分ける
左から右へと太さと大きさが変化するように配植。背景のクリプトコリネで右上がりの三角構図をとっている。
左から右へと太さと大きさが変化するように配植。背景のクリプトコリネで右上がりの三角構図をとっている。

水の流れと空間を意識
上から見ても左側に抜けて広がるように背景の植栽スペースを確保。左手前に背の低いクリプトコリネを植えて空間の広がりを出している。
① Cry.パルバ
② Cry.ルーケンス
③ Cry.カウディゲラ
④ Cry.アルビダ
⑤ Cry.スピラリス、Cry.スピラリス タイガー混栽
上から見ても左側に抜けて広がるように背景の植栽スペースを確保。左手前に背の低いクリプトコリネを植えて空間の広がりを出している。
① Cry.パルバ
② Cry.ルーケンス
③ Cry.カウディゲラ
④ Cry.アルビダ
⑤ Cry.スピラリス、Cry.スピラリス タイガー混栽

2.属内の多様性を表現
合計7種類を用いて表現している。バリエーション豊かなクリプトコリネ属だからこそできるレイアウトとなった。
合計7種類を用いて表現している。バリエーション豊かなクリプトコリネ属だからこそできるレイアウトとなった。

3.色調にアクセントを加える
緑系が多くなる植栽の中に、赤色を呈するハイグロフィラ・ピンナティフィダを加えた。中間層の鮮やかさを演出するつもりだったため、もう少し赤味を引き出したかった。
緑系が多くなる植栽の中に、赤色を呈するハイグロフィラ・ピンナティフィダを加えた。中間層の鮮やかさを演出するつもりだったため、もう少し赤味を引き出したかった。

4.自然の中で行われるテリトリー争い
開けた土地の川に住む魚のイメージでオデッサ・バルブを泳がせている。この水草群落は、婚姻色で赤く美しくなったオス同士の闘争の場にもなっている。
開けた土地の川に住む魚のイメージでオデッサ・バルブを泳がせている。この水草群落は、婚姻色で赤く美しくなったオス同士の闘争の場にもなっている。
水草の生長やその性質に合わせた管理とADAプロダクトの使い方
ADAプロダクトの中には、その製品が持つ特徴を活かして定番の使い方からさらに工夫し応用した使い方のできるものがあります。 ここでは、さまざまな形態を持つクリプトコリネをメインに植栽された本水景でのメンテナンス術を紹介します。
根張りが決め手 【 クリプトコリネ・パルバ 】
クリプトコリネの栄養吸収は主に根から行われる。 植栽後にいかに早く発根し底床に根を張れるかがその後の生長を左右するため、BCパウダーの配合で、より良好な底床環境を再現できるパワーサンド・アドバンスを使用した。 前景にはBIO みずくさの森 クリプトコリネ・パルバとルーケンスを植栽したが、Cry.パルバは新しい根が張るまでは底床から抜けやすいので、それを防ぐことが重要である。
クリプトコリネの栄養吸収は主に根から行われる。 植栽後にいかに早く発根し底床に根を張れるかがその後の生長を左右するため、BCパウダーの配合で、より良好な底床環境を再現できるパワーサンド・アドバンスを使用した。 前景にはBIO みずくさの森 クリプトコリネ・パルバとルーケンスを植栽したが、Cry.パルバは新しい根が張るまでは底床から抜けやすいので、それを防ぐことが重要である。

アクアソイル・アマゾニア Ver.2は濁りにくい特長がある。 この特長を活かし、アマゾニア Ver.2を細かい粉状にすりつぶして底床の上層に敷くことを試みた。 このことで適度に空隙が埋まり、根が浮き上がることなく順調な発根が見られた。

粉状のアマゾニア Ver.2によって根周辺の空隙が適度に埋まり、浮力が抑えられ根が張りやすくなる。

アクアソイル-アマゾニア Ver.2
セット初期の藻類が発生しにくく、グリーンブライティ・シリーズなどでの栄養素のコントロールもしやすい。
セット初期の藻類が発生しにくく、グリーンブライティ・シリーズなどでの栄養素のコントロールもしやすい。
定期的な栄養素の追加供給 【クリプトコリネ】
クリプトコリネなどの水草によって根からの栄養吸収が盛んに行われ、底床内の栄養素が不足すると、葉色が薄くなったり生長速度が緩やかになることがあるため固形栄養素の追加が有効である。
クリプトコリネなどの水草によって根からの栄養吸収が盛んに行われ、底床内の栄養素が不足すると、葉色が薄くなったり生長速度が緩やかになることがあるため固形栄養素の追加が有効である。

ボトムプラスを定期的に添加して窒素や鉄分を供給すると、底床内の栄養素が保たれ生長が促進される。 ボトムプラスを差し込む場所のアクアソイルの厚みが充分でないときは、ボトムプラスを半分に折りサイズを調整すると的確に埋めることができる。

ボトムレリーズ/ボトム・プラス
15cm間隔を目安に水草の根元から2〜3cm離れた所に深く打ち込む。
15cm間隔を目安に水草の根元から2〜3cm離れた所に深く打ち込む。
水の流れを明確にする 【クリプトコリネ・スピラリス】
自生地のクリプトコリネ・スピラリスは日光が当たる場所で水流に身を任せ、草体をなびかせて生息している。 本種を背景に植栽した本水景では、葉の密度を右から左へ向けてグラデーションをつくるように薄くすることで、暗い所から光の当たる明るい空間へ抜けていく水の流れを表現している。
自生地のクリプトコリネ・スピラリスは日光が当たる場所で水流に身を任せ、草体をなびかせて生息している。 本種を背景に植栽した本水景では、葉の密度を右から左へ向けてグラデーションをつくるように薄くすることで、暗い所から光の当たる明るい空間へ抜けていく水の流れを表現している。

葉の密度を緻密にコントロールするためには、余分な葉や古くなった葉の摘み取りが大切。 Cry.スピラリスを葉柄の根元から正確にカットするためにプロシザース S カーブタイプを使用した。 密生した長い葉のカットには、柄の長いハサミを使用することで周辺の水草に触れにくく、余計なダメージを与えることもない。

プロシザース S カーブタイプ
カーブした刃先で、密生した水草の中でも狙った葉を確実に捕らえてカットできる。
カーブした刃先で、密生した水草の中でも狙った葉を確実に捕らえてカットできる。
メリハリを持たせる 【ウィーピング・モス】
モスの仲間は、水景の時間の経過や趣きを感じさせる重要な水草の一つと言える。 今回使用したウィーピング・モスは重なって這うように生長する特徴があるため、広い空間へ向かって這い出ていく表現を、ウィーピング・モスの密度に高低差をつけて維持した。
モスの仲間は、水景の時間の経過や趣きを感じさせる重要な水草の一つと言える。 今回使用したウィーピング・モスは重なって這うように生長する特徴があるため、広い空間へ向かって這い出ていく表現を、ウィーピング・モスの密度に高低差をつけて維持した。

ウィローモスなどと比べて本種はトリミング後の葉の展開が遅い傾向にあるため、部分的な摘み取りで、下から生長してくる葉を活かすように間引いていくことが大切。 この管理は、手元で細かな微調整を利かせやすいプロシザース・スプリング ストレートタイプを立て気味に使い、ついばむようにカットすると良い。

プロシザース・スプリング ストレートタイプ
弱い力で刃を閉じることができ取り回しが利くため細かな作業に向いている。
弱い力で刃を閉じることができ取り回しが利くため細かな作業に向いている。