NATURE IN THE GLASS 「風ぬける丘」
吹き抜ける緑の風
石と盛土で丘を表現した草原レイアウト
[ 風ぬける丘 ] 石組水景の基本は、石の配置や傾きで水の流れを表現し、自然の水中景観を再現することだが、この水景は通常の石組水景とは趣を変え、広大な草原の風景をイメージして制作した。石の数は少なくシンプルに、草原に露出した大きな岩に見えるように表情が穏やかな万天石を選んだ。この水景のポイントは、左右の盛土の間につくった谷にある。谷を右の盛土の背後に回り込ませることで、草原に連なるなだらかな丘を表現している。丘から谷へ吹き抜ける爽やかな風を感じてもらえたらうれしい。
DATA
撮影日 : 2020年3月11日(ADA)
制作 : 本間 裕介(レイアウト制作・文)
水槽 : キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
照明 : ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過 : スーパージェットフィルターES-2400(バイオリオL)
素材 : 万天石
底床 : アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、
クリアスーパー、トルマリンBC
CO₂ : パレングラス・ビートル50Ø、CO₂ビートルカウンターで1秒に10滴(タワー使用)
AIR : リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤 : ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・ニトロ
換水 : 1週間に1度 1/2
水質 : 水温25℃ pH:6.8 TH:20mg/L
水草
BIO グロッソスティグマ
BIO ヘアーグラス
BIO ショート・ヘアーグラス
アラグアイアレッドシャープリーフハイグロ
魚種
グリーンネオン・テトラ
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ
グロッソスティグマの草原
天野 尚が石組レイアウトの実践から見出したとおり、広大な草原を表現するのにグロッソスティグマほど適した水草はない。どこまでも続くような爽やかなグロッソスティグマの草原は、開放感と安らぎを与えてくれる。
天野 尚が石組レイアウトの実践から見出したとおり、広大な草原を表現するのにグロッソスティグマほど適した水草はない。どこまでも続くような爽やかなグロッソスティグマの草原は、開放感と安らぎを与えてくれる。
万天石を用いた新たなる表現への挑戦
石組レイアウトには、ネイチャーアクアリウムの創始者である天野 尚が確立した型がある。それは日本古来の庭園石組の手法である三尊石組に着想を得たものだが、自然観察に基づく鋭い感性で大胆な石の傾け方や急峻な盛土などのアレンジを施し、天野独自の水景スタイルとして成立していった。たとえ水槽サイズや石の種類、水草や魚の種類は違っても、天野のつくった石組レイアウトと一目でわかるほど、そのスタイルは完成されたものだった。しかしながら、天野自身、完成されたスタイルをさらに超えようと試行錯誤を繰り返していたことも事実である。私もそれにならい、石組レイアウトで新しい表現方法ができないか、機会があれば模索している。イベント展示用に制作したこの水景は、立体的な工夫でどの角度からでも楽しんでもらえる水景ができないか挑戦したものである。
風景からのインスピレーション
佐渡島を代表する景勝地、大野亀。海岸に突き出した巨大な一枚岩の裾野には草原が広がり、初夏にはトビシマカンゾウが咲き誇る。そんな爽やかな風が吹き抜ける草原をイメージした。
新潟県佐渡市・大野亀
2008年6月上旬/撮影 天野 尚
佐渡島を代表する景勝地、大野亀。海岸に突き出した巨大な一枚岩の裾野には草原が広がり、初夏にはトビシマカンゾウが咲き誇る。そんな爽やかな風が吹き抜ける草原をイメージした。
新潟県佐渡市・大野亀
2008年6月上旬/撮影 天野 尚
構図の意図
遠くにある巨大な一枚岩を表現するため、表情が穏やかな万天石を選択。丸を付けた箇所は、あえて見えるか見えないかの状態に石を配置してのぞき込ませることを意図した。
2020年3月11日 撮影
遠くにある巨大な一枚岩を表現するため、表情が穏やかな万天石を選択。丸を付けた箇所は、あえて見えるか見えないかの状態に石を配置してのぞき込ませることを意図した。
2020年3月11日 撮影
①水草選定のポイント
60cmの奥行きの中で丘と谷をつくるには、急勾配の盛土を施す必要がある。崩れやすい急斜面には佗び草 グロッソスティグマを用いることで、アクアソイルが流れ落ちるのを防ぐことができた。
60cmの奥行きの中で丘と谷をつくるには、急勾配の盛土を施す必要がある。崩れやすい急斜面には佗び草 グロッソスティグマを用いることで、アクアソイルが流れ落ちるのを防ぐことができた。
管理に役立つプロダクト
グロッソスティグマのトリミングには、カットする範囲が広いストレートのプロシザース・ショートが便利。水深のある水槽前面のトリミングにはウェーブが適している。
グロッソスティグマのトリミングには、カットする範囲が広いストレートのプロシザース・ショートが便利。水深のある水槽前面のトリミングにはウェーブが適している。
②丘と谷による奥行きの表現
ネイチャーアクアリウムに限らず、写真や絵でも奥行きの表現は作品に深みを持たせる上で重要なポイントになる。この水景では、丘の向こうに見えない部分(谷)をつくることで広がりを想像させ、奥行きを表現している。
ネイチャーアクアリウムに限らず、写真や絵でも奥行きの表現は作品に深みを持たせる上で重要なポイントになる。この水景では、丘の向こうに見えない部分(谷)をつくることで広がりを想像させ、奥行きを表現している。