NATURE IN THE GLASS 「陰と陽」
コントラストを意識した明るくも落ち着いた自然を表現
[陰と陽]自然の持つ悠久さや野生味を表現するために陰生水草を中心とした水景に仕上げた。陰生水草とウィローモスが流木と石を飲み込むように育っている様子は自然の1コマを想起させる。今回、陰生水草だけではなく、水景の色彩を意識し赤い葉のルドウィジアと化粧砂を使用し明るい印象に仕上げた。流木の影になる部分は見た目のコントラストを意識したこともあるが、水槽内にいる魚たちの隠れ家をつくり生き物が安心して過ごせる棲息環境を目指し意図的に設けた。さまざまな工夫を凝らし見る人の心が落ち着く、そんな水景になっていればと思う。
DATA
撮影日 : 2021年4月20日(ADA)
制作 : 内田 成(レイアウト制作・文)
水槽 : キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
照明 : ソーラーRGB ×2(1日8時間30分点灯)
ろ過 : スーパージェットフィルターES-1200(バイオリオL)
素材 : ホーンウッド、万天石
底床 :トロピカルリバーサンド、ラプラタサンド、アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2 : パレングラス・ビートル40Ø、CO2ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR : リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤 : ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ、フィトンギット・プラス(換水後)
換水 : 1週間に1度 1/3
水質 : 水温25℃ pH:6.4 TH:20mg/L
水草 :
BIO アヌビアス・ナナ プチ
BIO アヌビアス・ナナ
BIO ブリクサ・ショートリーフ
ボルビティス・ヒュディロッティ
バリスネリア・スピラリス
ルドウィジア・グランデュローサ
ロターラsp. インレー
ミクロソラム・クラビ
グリーン・ロターラ
クリナム・アクアチカ・ナロー
ウィローモス(モスバッグ)
魚種 :
シルバーチップ・テトラ(ハセマニア)
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ
陰生水草とコケで骨格を隠す
素材を組んだときは存在感のあった流木や石も時間の経過により、シダやコケに覆われるようになったことで一体感が生まれた。特にミクロソラム・グラビはこの水景では主役を張る存在となり、シダ特有のみずみずしい印象を水景に与えている。
素材を組んだときは存在感のあった流木や石も時間の経過により、シダやコケに覆われるようになったことで一体感が生まれた。特にミクロソラム・グラビはこの水景では主役を張る存在となり、シダ特有のみずみずしい印象を水景に与えている。
見る人の視線を誘導する
赤い水草を構図の重心に置くことは基本だが、ここでは見たときに視線を誘導する意図もあった。今回は主にルドウィジア・グランデュローサを多く使用したが植栽範囲とトリミングラインに特に気を使って管理を行った。
赤い水草を構図の重心に置くことは基本だが、ここでは見たときに視線を誘導する意図もあった。今回は主にルドウィジア・グランデュローサを多く使用したが植栽範囲とトリミングラインに特に気を使って管理を行った。
水草により体色が映える
有茎草と化粧砂が明るい分、魚は落ち着いた印象のハセマニアを単泳させた。賑やかな混泳とは異なり種類を絞ることで水景に落ち着いた印象を与える。
有茎草と化粧砂が明るい分、魚は落ち着いた印象のハセマニアを単泳させた。賑やかな混泳とは異なり種類を絞ることで水景に落ち着いた印象を与える。
透明感のある背景草
テープ状のバリスネリア・スピラリスを背景に使用することで、後ろから光を当てたときに透き通る透明感が生まれ、清涼感のある印象を与える。
テープ状のバリスネリア・スピラリスを背景に使用することで、後ろから光を当てたときに透き通る透明感が生まれ、清涼感のある印象を与える。
SUIKEI REBORN
同じ素材で水景をつくり替える
以前使用したレイアウト素材を再度使用し水景を制作することはよくあるが、今回の2つの水景は素材に関しては流木1本小石1つも足しも引きもせずつくり上げた。前の水槽を崩した翌日に新たにつくり替えたので、即興的な制作感覚もあり、自分の中では1つのチャレンジ水景でもあった。水景に使われる流木や石は一つとして同じ表現を持つものはなく、基本的に構図を組む際は、流木や石の良いところを見せるように配置するが、ものによっては見せたい表現が複数箇所ある場合もある。そんな素材の持つ魅力を探しながら即興的な制作を楽しんだ。
使用した素材
2つの水景で使用した主な素材。今回はこれらで水景のリボーンを試みた。
2つの水景で使用した主な素材。今回はこれらで水景のリボーンを試みた。
レイアウト変更前の完成水景(AJ289号掲載)。厳しい自然の中で力強く生きる植物の姿をイメージして表現した。
化粧砂で明るい印象に
似たような表現を避けるため底床にラプラタサンドを使用し、前作よりも明るい印象を持たせた。ソイルを入れる前に前側から多めに化粧砂を盛るように入れることで、土留めの石の隙間に砂が入り込み、ソイルの流出を抑えることができる。
似たような表現を避けるため底床にラプラタサンドを使用し、前作よりも明るい印象を持たせた。ソイルを入れる前に前側から多めに化粧砂を盛るように入れることで、土留めの石の隙間に砂が入り込み、ソイルの流出を抑えることができる。
背景は前作からバリスネリア・スピラリスを引き継ぎつつ、ルドウィジア・グランデュローサとロターラsp. インレーを中心とした鮮やかな印象を表現。バリスネリアはランナーを伸ばし殖えるのでガラス面から少し離し、余裕を持って植えた。
育成に時間のかかるミクロソラム・クラビとボルビティス・ヒュディロッティは大きい株のまま取り外し再利用した。