NATURE IN THE GLASS 「群生の春」
凸型構図と配植の工夫で際立つ水草の群生美
[ 群生の春 ] 今回の水景はオーソドックスな凸型構図だが、多種多様な水草の群生美をテーマの一つとしている。水景をつくる上で、水草の種類は少ないほうが水景に統一感やメリハリを出しやすい。しかし、多くの種類を使用してもそれぞれの水草の植栽に意味を持たせることで、水景にまとまりを持たせることができる。この水景の例では、タイガーロータスはアクセントと水中感の演出、中景のクリプトコリネは自然感の演出に加えて色調の違いで背景の有茎草群落を際立たせる狙いがある。管理の難易度は高くなるが、水草の群生美は素晴らしい。色とりどりの水草が生い茂る水景には、魚もさまざまな種類を混泳させたい。
DATA
撮影日:2019年10月24日(ADA)
制作:荒木 大智(レイアウト制作・文)
水槽:キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
照明:ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルターES-2400(バイオリオL)
素材:ブランチウッド、山水石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、 クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル50Ø、ビートルカウンターで1秒に10滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、 グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:20mg/L
水草:佗び草 ロターラ・ナンセアン / グリーン・ロターラ / ロターラ・マクランドラ・グリーン / ルドウィジア・グランデュローサ / ラージリーフ・ハイグロ / ミリオフィラム・マトグロッセンセ / ニードルリーフ・ルドウィジア / バリスネリア・スピラリス / バリスネリア・ナナ / エキノドルス・アングスチフォリウス / エキノドルス・テネルス / グロッソスティグマ・エラチノイデス / タイガーロータス・レッド / クリプトコリネ・バランサエ / クリプトコリネ・ウェンティ グリーン / クリプトコリネ・ウェンティ ブラウン / クリプトコリネ・ペッチー / ミクロソラム・ナロー / アヌビアス・ナナ / ウィローモス(モス バッグ)
魚種:パール・グラミー / セレベス・レインボー / ラスボラ・アクセルロディ・ブルー / ラスボラ・ヘンゲリィ / スファエリクティス・バイランティ / サイアミーズ・フライングフォックス / オトシンクルス / ヤマトヌマエビ
凸型構図を意識した骨格づくりと水草配植のポイント
凸型の構図骨格
今回は凸型構図を構想し、流木と石を組んだ。水草を植栽した直後は流木や石の印象が強いが、水草が繁茂することで印象が弱くなるように計算している。
①構図のポイント
水草が繁茂した後は流木の印象が弱くなるように、細めの流木を使用した。見せ場となる有茎草の花束(茂み)を支えるイメージで、流木は上が広がるように配置。この水景では、まさに流木が骨格としての役割を果たしている。
②陰生水草の植栽
上で水草が茂り暗くなることが予想される部分には、アヌビアスやクリプトコリネなどの陰生水草を植栽。これらの水草には自然感の演出としての意味もある。
③有茎草の配植
有茎草の茂みで最も高さの低くなる左右の端には、トリミングに強いグリーン・ロターラや丈が伸びにくいニードルリーフ・ルドウィジアを植栽。狭い範囲で密度を出すため、ロターラ・ナンセアンは佗び草を使用した。また、制作時には遠近感を狙って葉の小さなロターラHraを植栽したが、インパクトに欠けるためルドウィジア・グランデュローサに変更した。
④流木にミクロソラム・ナローを配置
ミクロソラム・ナローは、佗び草マットに付けて1年ほど水中管理したものを株分けして使用。流木のポイントとなる箇所に、ウッドタイトで固定していく。水中で健康に生育していたため、流木に固定した後も葉の展開が良く、短期間できれいな状態になった。
赤と緑のトライアングル
この水景では、タイガーロータスと赤系有茎草による赤のトライアングルと、流木にポイント的に配置したミクロソラム・ナローによる緑のトライアングルにより、メリハリと安定感を与えている。
水景を引き立てるテクニック
水中感の演出
水流によって葉がゆらぎやすいテープ状の水草や葉の薄いタイガーロータスは、水景に水中感を演出するのに適している。
エキノドルス・テネルスの管理
この水景ではエキノドルス・テネルスの範囲が広がりすぎると乱雑な印象となるため、中景付近にとどまるようにランナーをカットして管理した。
シャドウとハイライト
中景にクリプトコリネなど褐色の水草を多く植栽することでシャドウの部分をつくり、ハイライトの部分である有茎草の群生を際立たせた。
ニードルリーフ・ルドウィジアの配植
有茎草の茂みは重心に濃い赤色の種類を配植し、空間に向かって淡い色の種類を配植していくのが基本だが、今回は水景全体の赤の配置バランスを考え、あえて濃い赤色のニードルリーフ・ルドウィジアを茂みの端に配植した。
赤と緑のコントラスト
差し戻しで長さを管理しやすい緑のラージリーフ・ハイグロと、横にボリュームの出る緑のミリオフィラム・マトグロッセンセを手前に植栽することで、奥に植栽したルドウィジア・グランデュローサの濃い赤色を際立たせている。