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CREATOR WORKS[ ウッドストーリー ]

CREATOR WORKS[ ウッドストーリー ]

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
ⒸAQUA DESIGN AMANO
[ ウッドストーリー ] 自然の中で一本の流木が辿るストーリーを想像しながら制作した水景。渓流で流され辿り着いたばかりの流木を表現するため、流木にはあえて何も着生させなかった。仮に中央の流木がなくともレイアウト構成は成立するようにしてあるが、それは流木が流されできた一過性の景色だからである。
DATA
制作日:2022年10月14日
撮影日:2023年3月16日
制作:内田 成(ADA SUIKEI CREATOR)
水槽:キューブガーデン W1,200×D500×H500(mm)
照明:ソーラーRGB ×2(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルター ES-1200(バイオリオG)
素材:山水石、ホーンウッド、アクアグラベル
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスM、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル 40Ø、CO₂ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.4 TH:50mg/L

水草:
1 ルドウィジア・グランデュローサ
2 ルドウィジア・レペンス
3 ニードルリーフルドウィジア(BIO)※
4 セイロンロターラ(BIO)※
5 ロターラ・福建省(BIO)※
6 ロターラsp.フラワー
7 ミリオフィラム・マトグロッセンセ(BIO)※
8 ロターラ sp.レディッシュ
9 ウィローモス(モスバッグ)※

魚種
グラスバルブ
サイヤミーズフライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

ⒸAQUA DESIGN AMANO
※はADA生体製品ラインナップです。
植栽 2022年10月14日撮影
完成 2023年3月16日撮影

SUIKEI CREATOR INTERVIEW


内田 成 Naru Uchida
一本の流木が辿る物語を表現
- まずは水景の制作コンセプトを教えてください。

簡単に言うと、流木の物語を表現しました。中央にある一本の流木が主役というか、ここではレイアウトの骨格ではなく、表現要素の一つとなっています。今までのネイチャーアクアリウムの手法では、流木に苔やシダを活着させて時間の経過や自然感を演出してきましたが、今回私が制作した作品ではあえて流木には何も着生させませんでした。それとは対照的に周りの山水石にはウィローモスなどをたくさん活着させました。

- それはなぜでしょうか。

渓流域などで流され、転がる流木片の様子を表現したかったからです。この作品での流木はそこに留まって苔やシダが生えるのではなく、ここに留まってはいないんです。今、この瞬間だけの光景で、また別な場所に流されていく、というような小さな情景を表現したかったんです。ある流木片の過去、現在、未来の時間軸を想像させるようなレイアウト表現を試みたつもりです。だからこの一本の流木を手にしたとき、自分なりにこの流木の物語をワクワクしながら考えました。レイアウト作業の一番楽しい時間ですよね。
構図 2022年10月14日撮影
- なるほど。留まる流木の光景ではないんですね。

そうですね。ある意味、刹那な光景であり、時間を重ねたような表現ではありません。佗び寂びとはちょっと違う感覚かもしれないですよね。佗び寂びって時間の経過によって醸し出される趣などを指しますが、ここでは刹那さです。どちらも日本的な感覚ですが、ネイチャーアクアリウムの表現においても大切にしたい感覚だと思っています。私はよくカメラ片手に渓流などに出掛けているんですが、嵐の前後では景観が変わってたりすることがあります。そんなときに留まることのない自然の流れというか時間軸を感じますね。景観を構成している石や流木も動いているという感覚を覚えたことが自分自身で面白かったですね。

- では具体的なレイアウト制作についてお聞きしますが、流木の選択については何かポイントはありましたか。

存在感ですね。大きさ、太さ、形、肌感、重量感など、今私が説明したコンセプトを体現するような流木を探しました。その結果、このホーンウッドになったわけですが、形も個性的ですごく惹かれました。コイツなら主役が張れるなって直感的に思いました。素材の選び方からすれば、石組レイアウトの親石選びに似たような感覚でしたね。

- 水草の植栽についてはいかがでしょうか。

今回は流木のシルエットをしっかりと残したかったため、あえて活着性水草が中心となる中景草は使いませんでした。水草は有茎草とウィローモスでシンプルな構成にしてます。有茎草の下茎部は山水石で隠れるようにしてあり、私の得意なカラーリングでもある紅葉のように見える有茎草の混栽を取り入れています。そのためL.グランデュローサ、L.レペンスのような 赤くなる有茎草の比率を上げています。また山水石にはウィローモスをしっかりと活着させ苔の絨毯のようになっていますが、そこに地肌剥き出しの流木が転がっている表現が面白いかなって思っています。
ルドウィジア・グランデュローサ、ルドウィジア・レペンスのような赤くなる有茎草の混栽を取り入れ、赤の比率を上げることで紅葉の様子を演出した。
- レイアウト表現としても新鮮な印象を受けました。

時間が経過して苔むした石と流され辿り着いたばかりの流木という時間差のある表現がこの作品の肝となる所です。この作品の中の流木もいつかはどこかに定着して苔むして周囲の風景に馴染んでくることがあるかもしれないんですけど、今この水景はまだその物語の途中というか、留まっていないという感じがこうした表現につながったのだと思います。今後も発展できる余地がありそうなので、今回は流木で表現しましたが、石でも同じような表現ができるかもしれませんね。私はけっこうレイアウト素材フェチなので、素材の表情を見せたいって思う所もあるんですよね。少し話が逸れるかもしれませんが、意外とレイアウト素材の表面の見せ方って考えさせられることが多いんです。自然に付着した藻類とかも完全にきれいにしてしまうよりは、薄っすらと付着していた方が自然に見えていいなって思うことがよくあるんです。また流木なんかは同じ流木を長く使っていると徐々に削れていくことがありますが、そうした変化もいいと思うんです。同じ素材だとしても管理、維持の仕方などで表情が変わってきます。そうした変化もレイアウト感覚に取り入れていきたいですね。レイアウト素材への愛着みたいなものを最近気付かされることが多いです。

- 今回の作品制作で一番楽しかったことは何でしょうか。

最初に言ったように流木の物語を表現しようというアイデアを思い付いたときですね。見た目がいい水景というのは案外つくりやすいものなのですが、オリジナリティのある水景っていうのはすごく難しいんです。そこの表現が今回は、けっこう思い通りにいったので楽しかったというよりはホッとした感じです。また魚については水の透き通るイメージとしてグラスバルブを選びましたが、背景の有茎草の色彩に負けないような色鮮やかな魚を選んでもよかったかなと思いますね。
山水石に活着したウィローモスの絨毯と地肌剥き出しの流木が明暗のコントラストになり、時間差を感じる表現につながった。手前に敷いているグラベルサンドは日本的な雰囲気を醸し出すために有効。川の中で角が取れた質感が水景のコンセプトとマッチしている。

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