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NATURE IN THE GLASS 「失われた鎧潟を再現水草がつくる魚たちの隠れ家」

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
[ 失われた潟 ]
この夏、新潟市の砂丘館で開催されている「潟の記憶展」は、写真や絵画、実際に使われていた漁具などによって失われた鎧潟を振り返るという趣旨のものである。そこで展示する水景の制作を依頼されたとき、真っ先に思い浮かんだのが少年時代の天野 尚が見たという鎧潟の水中を再現することだった。水中に生い茂った水草が光合成を行い、魚たちがその水草の茂みを隠れ家にしている。在りし日の鎧潟の水中で繰り広げられていたその美しい光景は、幼い天野に大きな衝撃を与え、ネイチャーアクアリウムの発想につながったという。その光景を想像しながら、潟の水中を覗き込んだようなイメージで制作した。水草が育つ潟の環境は、多くの生命を育む重要な場所でもある。

DATA


撮影日:2019年7月30日(ADA)
制作:本間 裕介(レイアウト制作・文)
水槽:キューブガーデン W90×D45×H45(cm)
照明:ソーラーRGB ×1(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルターES-600(バイオリオM)
素材:山水石、ホーンウッド
底床:アクアソイル-アマゾニアⅡ、アクアグラベル、 パワーサンド・アドバンスM、バクター100、 クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル40Ø、ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-4 によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、 グリーンブライティ・アイアン、ECA・プラス
換水:1週間に2度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.4 TH:20mg/L

水草:■水中部・フトイカンガレイミズオオバコキクモヒロハノエビモクロモミズユキノシタホソバノウナギツカミヘアーグラスカズノゴケ(リシア)ヤナギスブタヤナギモマツモミゾハコベウィローモス(モスバッグ)■水上佗び草部分・ノチドメサクラタデホソバノウナギツカミセリウィローモス(モスバッグ)

魚種:タイリクバラタナゴシナイモツゴメダカチョウセンブナ

日本産水草を活用し潟の水中景観とエコトーンを再現


このレイアウトは、潟の自然を再現するため、流木や石などの構図素材はあまり主張させず、水草をメインに構成しています。その際、天野から聞いていた鎧潟の自然のイメージと、制作者自身が幼いころに体験した水辺のイメージを融合してレイアウトのイメージを膨らませました。潟に潜って見た水草の茂みの奥に広がる魚たちの世界を表現するため、通常はレイアウトの手前に敷く化粧砂を奥のほうに敷き、葉がやや長く伸びるヘアーグラスや抽水植物のカンガレイを手前に植栽しています。一見、ネイチャーアクアリウムのレイアウトセオリーに反しているようですが、こうすることでレイアウトの奥のほうが明るくなり、水草の茂みの奥に空間が広がっているように感じられるのです。
佗び草でエコトーンを再現
水上部分の佗び草は日本産のノチドメ、セリ、サクラタデ、ホソバノウナギツカミによる特別仕様。佗び草ハンガーを用いてちょうど腰水程度の高さになるように設置した。
抽水植物も活用
カンガレイやフトイなどの抽水植物を植栽し、水中から水上部分の佗び草へのつながりを持たせた。これらの抽水植物は、水上に十分に葉を展開させることで長期的に育成が可能となる。
下草の植栽
潟の水底にあたる部分には、下草としてヘアーグラスやミゾハコベを植栽。これらの水草は明るい環境を好むため、影ができないように上のほうの水草を管理することが重要になる。
中景の植栽
潟のイメージを表現する上で一番難しいのが中景。一般的なレイアウトではシダ類やアヌビアスが活躍するが潟には存在しない。今回は中景にヤナギスブタや有茎草を植栽した。
視線を誘導する配植
水景の周囲には色の濃いヒロハノエビモ、クロモ、ミズユキノシタを植栽し、中央部分にはミズオオバコやリシアなど明るい水草を植栽することで中央に視線を誘導する配植になっている。こうすることで魚の遊泳空間が際立ち、観賞者は魚たちが戯れる隠れ家をそっと覗いているような感覚になる。

 

中央に設けた遊泳空間
レイアウトの中央、やや手前には魚の遊泳空間になるように、化粧砂を敷いた丸い空間を設けた。可憐な水草の奥で魚たちがゆったり泳ぐ姿は、きっと私たちの心を豊かにしてくれることだろう。
今回は構図や造形的な美しさよりも日本産水草の美しさや潟の自然感を表現することを優先し、流木はあえて形にはこだわらなかった。
2019年6月28日 撮影

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