NATURE IN THE GLASS 「初夏の薫風」
石組水景から爽やかな風に吹かれ涼を感じる
気温の上昇する春から初夏にかけて、山裾を流れる川は雪解け水によって増水し、ときに石同士がぶつかって砕け散るほどの荒々しい表情を見せる。そして、川の増水が落ち着くころ水草たちは一気に増殖を始め、やがて石を覆うまでに生長する。そんな光景をイメージしながら、水景の制作にあたった。まず、表情のある大きな山水石を組み、水の流れの強い部分とそうでない部分を石の配置と水草の配植で表現。ひらひらと揺らぐコウホネで、初夏の爽やかさを演出した。

DATA
撮影日 : 2019年10月11日(ADA)
制作 : 本間 裕介(レイアウト制作・文)
水槽 : キューブガーデン W180×D60×H60(cm)
照明 : ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過 : スーパージェットフィルターES-2400(バイオリオL)
素材 : 山水石
底床 : アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2 : パレングラス・ビートル50Ø、CO2ビートルカウンターで1秒に10滴(タワー使用)
AIR : リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤 : ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・ニトロ
換水 : 1週間に1度 1/2
水質 : 水温25℃ pH:6.6 TH:20mg/L
水草
コウホネ
ソーシャルフェザーダスター
BIO グロッソスティグマ
BIO ヘアーグラス
BIO ウィーピングモス
佗び草マット ウィローモス
佗び草マット プレミアムモス
魚種
ネオンドワーフ・レインボーフィッシュ
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

涼を感じる水草と魚
気温の上昇するこの季節、せめて水景からは涼を感じたい。水景に涼を演出するには、水草と魚の選択が重要になる。水草は爽やかな緑で水流にゆらぐ・なびく種類、魚は青系の体色で群れて泳ぐ種類が適している。
気温の上昇するこの季節、せめて水景からは涼を感じたい。水景に涼を演出するには、水草と魚の選択が重要になる。水草は爽やかな緑で水流にゆらぐ・なびく種類、魚は青系の体色で群れて泳ぐ種類が適している。
自然景観に学ぶ “涼感”レイアウトのヒント
ネイチャーアクアリウムが他の水草レイアウトと決定的に違うのは、創始者である天野 尚が実践していた「自然から学ぶ」という姿勢にあると思う。梅雨を経て本格的な夏に向かうこの時期は、涼しげな風景を求めるためか、無意識に渓流や滝に足が向かう。渓流や滝は、今回のテーマであるレイアウトに涼感を表現する上で、ヒントになる風景の宝庫と言えるのだ。私は、ただ涼感だけを求めるのではなく、自然の中で長い時間をかけつくられた石の造形や細かい小石の表情、植物の生え方などを観察するように心がけている。


水の滴り、植物の生え方、 崩れた石に 涼の表現を学ぶ


風景からのインスピレーション
強い水流が当たる滝下の石には植物が生えず、離れた場所には生えている。風景には、水景に生かせるさまざまなヒントが隠れている。
撮影/2018年5月 福島県猪苗代町
強い水流が当たる滝下の石には植物が生えず、離れた場所には生えている。風景には、水景に生かせるさまざまなヒントが隠れている。
撮影/2018年5月 福島県猪苗代町
イメージしたのは涼を感じる爽やかな水景
水景に涼感を表現するために、素材には山水石を用い、砕けた石が散在しているような石組をつくった。左側は増水した強い流れにも負けない大きな石群をイメージして配石。砕けた石のかけらを石のまわりに散りばめた。増水した川は強い流れができ、石は水に流されながら砕ける。石のまわりの細かい石は、その砕けた石の様子を表現したものである。右側は石を少なくして空間を広く取り、ヘアーグラスと前景草のグロッソスティグマのみとすることで強い水が流れる場所を表現した。また、背景の水草も、爽やかさと涼しさが感じられるコウホネとソーシャルフェザーダスターを選んだ。コウホネは水の流れが弱まる石の陰に植栽。ソーシャルフェザーダスターは細く繊細な葉を持つテープ状の水草だが、バリスネリアのようにランナーを出さないので長期的な維持管理も楽に行える。


大型水槽での石組の制作
180cm水槽クラスの大型水槽では、レイアウトに用いる石も大きくなるため、石組の制作は数人がかりでの作業となる。次に行う作業を確認しながら、石の配置を決めていく。
180cm水槽クラスの大型水槽では、レイアウトに用いる石も大きくなるため、石組の制作は数人がかりでの作業となる。次に行う作業を確認しながら、石の配置を決めていく。

構図の意図
全体のバランスとして右側に大きく空間を持たせたかったため、親石周辺の石群は中央から左寄りに配置している。この構図によって左側に強い水流を受け止める安定感を、右側に強い水流を表現している。
全体のバランスとして右側に大きく空間を持たせたかったため、親石周辺の石群は中央から左寄りに配置している。この構図によって左側に強い水流を受け止める安定感を、右側に強い水流を表現している。


①砕けた石の表現
川の強い流れで石同士がぶつかり、砕けた様子を表現するために、石は割れたような形状の山水石を選んだ。大小の山水石を配置し、盛土を施した後、石の周りに小さな石のかけらを散りばめた。
川の強い流れで石同士がぶつかり、砕けた様子を表現するために、石は割れたような形状の山水石を選んだ。大小の山水石を配置し、盛土を施した後、石の周りに小さな石のかけらを散りばめた。

②プロピンセットが適した状況
下草などの植栽では、先端の細いプロピンセットを使用することで、小石の隙間にも細かく植栽していくことができる。プロピンセットの中でも、L(全長270mm)は特に取り回しがしやすいため使用頻度が高い。
下草などの植栽では、先端の細いプロピンセットを使用することで、小石の隙間にも細かく植栽していくことができる。プロピンセットの中でも、L(全長270mm)は特に取り回しがしやすいため使用頻度が高い。


③グリップタイプが適した状況
太い株のソーシャルフェザーダスターは、プロピンセット・グリップタイプを使うとしっかりと植えやすい。グリップタイプの先端は太くなっているので、先端で底床を掘るように植栽できる。
太い株のソーシャルフェザーダスターは、プロピンセット・グリップタイプを使うとしっかりと植えやすい。グリップタイプの先端は太くなっているので、先端で底床を掘るように植栽できる。

植栽の様子
レイアウトに細かい表現をするためには、水草の植栽に使いやすいプロピンセットが必須。水草の配植を細かく調整していく。
レイアウトに細かい表現をするためには、水草の植栽に使いやすいプロピンセットが必須。水草の配植を細かく調整していく。


④流れついたモスが石の隙間に引っかかって育った様子を表現するために、石の割れ目にウィーピングモスとプレミアムモスを混ぜて挟み込んだ。山水石は割れ目が多く、表面がザラついているのでモスが活着しやすい。