NATURE IN THE GLASS 「結び岩」
龍王石を用いたシンメトリーな構図の夫婦岩レイアウト
[ 結び岩 ] 人々は古くからある自然物を人や事物などの類似する何かに見立て意味付けすることで、自然との結び付きを意識的に深めてきた。今回のレイアウトは、日本各地の海岸線に見られる夫婦岩をモチーフに制作した。配石をシンメトリー型にすることで、神聖、崇高といったイメージを表現している。海の波風に侵食されたような風合いの龍王石に、葉の細かいキューバ・パールグラスを合わせることで、水景がより広大に見えるよう意識した。また、アクセントとして植栽した赤系の水草により、水景に生き生きとした印象を加えている。

DATA
撮影日:2020年2月14日(ADA)
制作:内田 成(レイアウト制作・文)
水槽:キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
照明:ソーラーRGB ×2(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルターES-1200(バイオリオL)
素材:龍王石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル40Ø、ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、
グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:50mg/L
水草:
BIO みずくさの森 キューバ・パールグラス
BIO みずくさの森 リシア
ゴイアス・ドワーフロターラ
魚種
レッド・テトラ
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

観賞する位置で表情を変える石景
水景の全体的な構図はシンメトリー型だが、左右のバランスやそれぞれの石の配置には変化をつけている。これには、観賞する位置によって石景の表情を変える狙いがある。
水景の全体的な構図はシンメトリー型だが、左右のバランスやそれぞれの石の配置には変化をつけている。これには、観賞する位置によって石景の表情を変える狙いがある。
自然から切り取った海岸と高山のモチーフの融合
このレイアウトでは、新潟県の笹川流れと佐渡島の夫婦岩、そして岩手県の八幡平の自然景観がモチーフになっている。これらの自然から切り取ったモチーフを、それぞれ素材や水草に落とし込んでレイアウトを構成しているのである。まず、笹川流れの岩礁地帯で見られる大小さまざまな岩の組み合わせを龍王石の配石で表現し、水景としてインパクトを持たせるため、その中に夫婦岩の構図を取り入れた。そして、水草の配植は、八幡平の植生を参考にしている。このように、ある一つの風景をモチーフとするのではなく、いくつかの風景から得たインスピレーションを融合することで、より自由な発想でレイアウトを制作することができる。

風景からのインスピレーション1
岩礁地帯の海上に見える岩は、いわば氷山の一角である。海底ではこれらの岩が連なって大きな岩礁を構成している。この連なりを龍王石で表現した。
新潟県村上市・笹川流れ 2017年9月上旬/撮影 内田 成
岩礁地帯の海上に見える岩は、いわば氷山の一角である。海底ではこれらの岩が連なって大きな岩礁を構成している。この連なりを龍王石で表現した。
新潟県村上市・笹川流れ 2017年9月上旬/撮影 内田 成

風景からのインスピレーション2
ダケカンバ、ナナカマド、ブナ、カエデ、シラカバなど標高の高い地域の植物は全体的に背丈が低くなる傾向にある。緑の中の紅葉を水草の配植で表現。
岩手県八幡平市・八幡平 2018年9月下旬/撮影 内田 成
ダケカンバ、ナナカマド、ブナ、カエデ、シラカバなど標高の高い地域の植物は全体的に背丈が低くなる傾向にある。緑の中の紅葉を水草の配植で表現。
岩手県八幡平市・八幡平 2018年9月下旬/撮影 内田 成


①親石の角度と緊張感
生長した水草で印象が柔らかくなりすぎないよう、親石は緊張感のある角度で配置して強い印象を与えるようにした。
生長した水草で印象が柔らかくなりすぎないよう、親石は緊張感のある角度で配置して強い印象を与えるようにした。

龍王石を組むポイント
親石の手前の配石は、横並びにならないよう前後させ、立体感を出す。石の間に下草が入り込むようにした。
親石の手前の配石は、横並びにならないよう前後させ、立体感を出す。石の間に下草が入り込むようにした。

②モチーフの融合
海岸の岩礁をモチーフにした配石と、高原の紅葉をモチーフにした配植。風景の忠実な再現ではなく、モチーフを融合することで新たに一つの水景として表現した。
海岸の岩礁をモチーフにした配石と、高原の紅葉をモチーフにした配植。風景の忠実な再現ではなく、モチーフを融合することで新たに一つの水景として表現した。


全体的に背の低い高山の植生をイメージしながら植栽していく。単調にならないようにキューバ・パールグラスやリシアで緑豊かな広大な高原を表現し、ゴイアス・ドワーフロターラで緑の中の紅葉を表現した。