ADAスモールトーク #01 「ある自然盆栽作品のこと」
ADAスモールトークは、ADAスタッフの目線で生き物や出来事、発見、感動などをお伝えする読み物コンテンツです。
ADA本社には盆栽棚と呼ばれる自然盆栽の数々が育成されているエリアがあります。ここには鉢や盆、雲山石などに植えられた盆栽たちがひっそりと並べられています。現在はADAネイチャーアクアリウム・ギャラリーが開館していないため、同じく盆栽棚も公開されていないのですが、ギャラリーが公開されている際にはこちらもご見学いただけます。おなじみのクロマツやハゼ、モミジなど盆栽としてよく見られるものもあれば、今回紹介するような一風変わった作品も並んでいます。
作者のいない作品
この作品は作者が居ません。というのも、風散布によって運ばれた種などが自然と発芽して、そのまま仕上がったものなのです。正に自然盆栽といえる一品ではないでしょうか。自然盆栽には「飛び込み」などと呼ばれる他の盆栽や周辺環境由来の草花などが芽吹いてくるものも作品に取り入れるという手法があります。ヒメホタルイなどイネ科の草たちやアザミの仲間が芽吹いており、周りの作品が由来となっていることが伺えました。僅かな底床と石材を配置したネオグラスエアに芽吹く植物たちのしたたかさには目を見張るものがあります。数年間静置していたものになりますが、ここまでの仕上がりになったのは今年が初めてで、来年以降もどのような植物たちの繁栄と衰退、競争が見られるのか楽しみです。
ちなみに植物が環境に応じて生長する特性をいかした生体製品として「佗び草」というものがあります。佗び草の混栽系の製品には複数種の水草が生育しています。これは、季節や気温、湿度といった栽培環境に応じて優勢となる種類が変わることで、製品一つひとつで横に広がったようなものや葉が大きく丈が出ているものなどシルエットとしての違いや、色のバランスなど見られる水草の様子が異なるものとなっています。
今回の自然盆栽でも見られたように植物たちはたくましく、したたかな存在でもあり、見た目の華やかさや美しさだけでない魅力がある生き物だと改めて感じました。身近で楽しめる生き物として今後も注目していきたいと思います。