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ネイチャーコラム 第5回 「ベタベタか、トゲトゲか。」

ネイチャーコラム 第5回 「ベタベタか、トゲトゲか。」

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
常日頃からネイチャーに身を置くライターが身近な自然をテーマに 季節ごとのコラムを発信していきます。
藪を進むと、ふと袖や足回りがチクチクしてきます。ハチか? 毛虫か? いえ、付着性種子のくっつき虫でした。地域によってはひっつき虫と呼ばれることもありますが、いずれにしても衣類に付着してくるものになります。厄介ながらも身近な草花だったのでさまざまな呼び方があるのかもしれませんね。 根付いたところから自らの意思で移動することのできない植物たちはあの手この手で種を撒きます。タチアザミのように綿毛を用いて宙を舞う風散布をしてみたり、ウキヤガラのように浮力を利用して流れていく水散布をしてみたり、ツリフネソウのように膨圧ではじけ飛ぶ自動散布をしてみたりと植物たちの種を残す戦略は多種多様です。
くっつき虫に話題を戻しましょう。このタイプの種子散布を行う植物たちは付着動物散布という様式に分類されます。名前のままですがくっつくことで種が移動していくということですね。くっつく方法はベタベタするかトゲトゲするかの2種類に分けられます。ベタベタするためには多糖類を合成する必要があり、トゲトゲするためには特異的な表面構造を形成する必要があるように種を広げていくための知恵が感じられます。写真のミズヒキという植物は紅白のかわいらしい花を咲かせます。実ができるときにかぎ状の花柱というめしべの一部が残り、ひっかかりとなって実が羽毛や体毛に付着します。トゲのある実をつくるのではなく、花がそのままくっつき機能を残すところが面白いです。水草の仲間でも付着動物散布をする種類があり、いわゆるヒシの仲間はひし形をした実の先端にあるトゲでサギやカモ、シギなどの水鳥にくっついて運ばれていきます。 ベタベタかトゲトゲか、どこでどんな種子に付着されるのか、試しにネイチャーへ出かけてみてはいかがでしょうか。

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