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ネイチャーコラム 第12回 「ザッコとは?」

小川 龍司小川 龍司
常日頃からネイチャーに身を置くライターが身近な自然をテーマに 季節ごとのコラムを発信していきます。 
学名をZacco platypusと名付けらた生物はオイカワという川魚です。不思議な名前で世界に紹介をしたのは、江戸時代に来日していたシーボルト博士です。大衆から雑魚(ざっこ)などと呼ばれて他の小魚たちと一緒くたにされていた様子から、このようなネーミングをしたのではないかと想像がつきます。オイカワは下流から中流にかけて広く生息し、標高の高い地域でも穏やかな景観の流域には中流からの繋がりで分布しています。食性の幅も広く、藻類から水生昆虫、底生動物など多くの水中生物を食べられることからも広域に生息している理由がうかがえます。しかし侵略生物としても知られ、隠岐島や奄美諸島などの島嶼、さらに四国地方の一部や東北地方において、琵琶湖産アユの混入放流による移殖報告があります。とはいえ、ヤマベ・ハスなどの方言名がつけられるなど古くから身近な魚になっていたのではないでしょうか。オイカワの由来は上流に向かって泳ぐ習性から川を追っていく様子や、捕まえるときには上流へ追い上げていく風習があったようで、それらが語源とされています。婚姻色と呼ばれる、春先の繁殖期に見られる美しい色彩が人気で、観賞魚として販売されていることもあります。生き物図鑑で見つけたオイカワの姿には、こんな色の魚が日本にも生息しているのか!と驚きとともにワクワクとした気持ちを抱いた思い出があります。田んぼ道の用水路へ網を持って出かけ、幾度となくガサガサと水中を掬ってみて網の中に姿を見つけたときの喜びは忘れがたいものです。ショウブやガマが生い茂る手掘りの水路にはもちろん、三面コンクリート製のU字溝でも観察できるように人為的な環境改変にも対応ができる強健な生き物ともいえます。現在はハス属として学名はOpsariichthys platypusに変更されましたが、これは分類上の話であって、身近な雑魚であることには変わりがないと思います。梅雨の合い間の晴れた日など、オイカワを探しにネイチャーへでかけてみてはいかがでしょうか。

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