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ネイチャーコラム 第11回 「グウッグ ギゥォ グッグ」

小川 龍司小川 龍司
常日頃からネイチャーに身を置くライターが身近な自然をテーマに 季節ごとのコラムを発信していきます。 
このカエルには耳で出会っている人も居ることでしょう。しかし実際に対面できる機会は少ない、そんなタゴガエルを紹介します。タゴという名前からは水田が連想されるかもしれませんが、山地性で渓流や清水、沢に生息し、特に伏流水を好むことが知られています。ちなみにタゴガエルの学名はRana tagoiとつけられているように、人名が名前の由来となっています。日本固有種で、急峻な地形をもつ日本の山地に適応しているのか、標高1000mを超える地点でも観察ができます。もちろん低山に面したような公園の水路で鳴き声を聞くことができますし、コンクリート製の水路でも土砂や枝が堆積する環境があれば生息しているのを見かけます。山の近くで流れのある水辺があれば、道路わきのちょっとした小川で鳴いていることもあります。ハイキング、トレッキングの際に沢がありましたら耳を澄ませてみてください。独特の鳴き声をし、タイトルにあるようなくぐもった 音が沢から聞こえたら、それはタゴガエルです。鳴き声はすれど姿は見えない、そんな観察がほとんどになりますが、春は姿を見かける絶好のチャンスになります。産卵の季節になるので、遡上する様子を目にすることができるのです。カエルなので、飛び跳ねながら沢登りをしていきますが、苦手そうに跳ねる様子には、つい声援をかけながら見入ってしまいます。沢の中にしゃがみこみ、待ち続けると写真のように小柄ながらも凛々しい風貌のタゴガエルと巡り合うことができます。彼らは伏流水のある岩陰、奥まった窪みの中で産卵を行っています。その水浸しの空洞の中でよく鳴き、岩や倒木にも反響して体のサイズ(4㎝ほど)に対して想像以上の音を発します。水の流れがあり、水流音が絶え間なく聞こえている中でもしっかりと通る声を出すことができるのです。そんなタゴガエルの特徴的な鳴き声を聞きにネイチャーへ出かけてみてはいかがでしょうか。

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