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CREATOR WORKS [ 水辺を想う ]

CREATOR WORKS [ 水辺を想う ]

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
ⒸAQUA DESIGN AMANO
[ 水辺を想う ] 水草の中に隠れている魚と出会う瞬間は、今でも私の心をときめかせてくれる。日本風の水景をつくりたいと思った根底には、そんな私の自然への回帰欲求があると思う。子供のころの記憶に残っている水辺は、いつもやさしく、美しい。そんなイメージを反映するために穏やかで、魚を観察するのが楽しくなるような水景を目指した。
植栽 2023年5月23日撮影
完成 2023年10月25日撮影
DATA
制作日:2023年5月23日
撮影日:2023年10月25日
制作:荒木 大智(ADA SUIKEI CREATOR)
水槽:キューブガーデン W1,800×D600×H600(mm)
照明:ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルター ES-2400(バイオリオG)
素材:ホーンウッド、万天石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル 50Ø、CO₂ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:50mg/L

水草:
1.ナガエミクリ
2.ガガブタ
3.ナガバコウホネ
4.キクモ
5.ホソバノウナギツカミ
6.エリオカウロンsp. ソーシャルフェザーダスター
7.エキノドルス・テネルス・マディラ
8.インディアンクラススラ(BIO)※
9.ロングヘアーグラス(BIO)※
10.ヘアーグラス(BIO)※
11.リシア(BIO)※
12.ウィローモス(モスバッグ)※

魚種
ニホンバラタナゴ
タモロコ
メダカ
サイヤミーズフライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

ⒸAQUA DESIGN AMANO
※はADA生体製品ラインナップです。

SUIKEI CREATOR INTERVIEW


荒木 大智 Daichi Araki
水草の自然な生長で形成されていく日本風の水景

- 今回制作した水景コンセプトをお聞かせください。

制作のコンセプトは「日本の水景」です。私はときどき日本の水景をつくりたいと思うことがあります。改めてなぜだろうと思ったときに、自然への回帰欲求があるのかなと思いました。たとえば私も子供のころ、近くの川で水草の茂みの中から小魚を獲ったりして遊んでいましたが、当時のそういった自然のやさしさだったり美しさだったりが思い出に残っていて、今回のような水域を表現したいと思い制作しました。タイトルを「水辺を想う」としたのは、今の日本の水辺を思ってつくったという側面と、記憶の中の子供のころの懐かしい水辺に思いを馳せてという側面の2つの意味を込めて「水辺を想う」というタイトルをつけました。

 

- レイアウトの構図ですが、流木が落ち着いた印象になっていますね。流木の選定理由などはどうでしょうか?

構図を見ていただくとわかると思いますが、バランスとしてはかなり低い構図で制作しました。構図の意図としてやさしさや穏やかさを表現したかったので、流木が水草に飲み込まれてもいいかなというイメージで少し低くい流木を選んでます。また、流木のレイアウトですが山で樹木が倒れ川の流れで運ばれてくる過程を表現しています。枝が水流で削られながら池にたどり着いたという池沼をイメージして構図を組みました。そういった点から枝振りが少なく古いイメージの流木を選んでレイアウトしています。

 
構図 2023年5月23日撮影
- 古めかしさを表現するためにあえて経年劣化した流木を使ったということでしょうか?

そうですね。もし上流のイメージでつくる場合は結構荒々しかったりかっこいい枝振りだったりしてもいいかと思いますが、今回は最終的に流れ着いたということを想定してますので、流木自体の時間の流れを感じられるような池沼をイメージしています。

 

- 予想通り完成した水景の中では背の低い流木が埋もれていますが、それらの役割はどういう意図でしょうか?

構図の下の方に結構小さい流木を転がすようにレイアウトしています。これは、レイアウトに空間やメリハリをつけるためです。普段は化粧砂を使って空間をつくったりすることもありますが、池沼というイメージの中では池に白砂がたくさんあることや岩がごろごろしていることはあまりないと思ったので、それらを使わずに空間を生むにはどうすれば良いのかと考えた結果、今回は小さめの流木を転がして空間を埋めることでメリハリをつけようと思いました。メリットとしては、形のよくない流木でも使いやすいこと。いわゆる駄木と言われるような流木でも、何本か重ねて用いることでいい感じに表現できます。石組で言うそこに空間を生む捨石のような役割ですね。

 

- 植栽について、今回のテーマである「日本の水景」をイメージした上で水草の選定はどうでしょうか。

最初にお話しした通り、今回は日本風の水景をイメージして制作していますが、たとえばエキノドルス・テネルス・マディラなど、日本産の水草ではないものも数種類、植栽しています。ですが、私はネイチャーアクアリウムを制作する際に手法として産地合わせをすることもありますが、必ずしも必要ではないと思っています。日本風のレイアウトをつくりたいと思ったときに日本は熱帯の環境ではないため、ネイチャーアクアリウムの環境に合う水草と合わない水草という問題があります。その中で、適応できる水草は使っていいと思いますし、そうではない水草は同じイメージを持つ熱帯性の水草を植栽して構成するのが良いと思っています。基本的にはネイチャーアクアリウムの環境の中で無理のないイメージの合う水草を選択しています。

 

- 前景と中景が混ざるような印象を受けましたが、そのような表現は狙ってたのでしょうか。

そうですね。今回は子供のころに体感した水草の中に魚が隠れているような環境をつくりたかったので前景の方にも背の高い水草を植栽しています。その代わり印象が重たくなりすぎないようにテープ系や透明感のある水草を多用して手前にありながらも抜け感を保つような水草の選択をしました。植栽全体的にテープ系の水草で構成されているような印象があると思いますが、水面まで届いているテープはほぼナガエミクリしか植栽していません。他にテープ系は、エキノドルス・テネルス・マディラとソーシャルフェザーダスターを植栽しています。ただ思った以上にソーシャルフェザーダスターは育っていないかなと感じています(苦笑)。あとはキクモとか、ホソバノウナギツカミとかも植栽していますが有茎草の茂みというよりは、テープ系の水草に近い役割を果たしています。上まで空間をつくりつつも抜け感をつくっているホソバノウナギツカミの赤もいいアクセントになっていると思います。

 

- 化粧砂ではなく下草でインディアンクラススラを選択したポイントは?

下草は例えばグロッソスティグマでもよかったのですが日本風の水景ということでインディアンクラススラの近縁種はよく日本の山里や田んぼに生えていることから選択しました。
下草にはグロッソスティグマではなく、日本の山里や田んぼをイメージしてインディアンクラススラを植栽した。
- 今回植栽した水草の中で1番のお気に入りとかありますか?

植栽の中ではナガエミクリが特に気に入っています。ありそうでないこのライトグリーンの色彩と柔らかくたなびく様子が水景の穏やかなイメージに合っていると思っています。テープ系のカーテンの表現はバリスネリアでも可能ですが、バリスネリアは強健種であり周りの水草を呑み込んでしまうので注意が必要だと思います。あとはナガバコウホネも植栽しています。サイズが大きくなり透明感もあるのでいかにも水草らしく気に入っています。これらは懐かしさを感じつつも表現として私自身、発見があったというか新鮮でした。たとえば自宅で水槽を制作するとなったときに、ナガバコウホネなどはあまり選択肢に上がらないと思います。ですが市場に流通していますし生長のクセもないので一度試してもらえば気にいる方もいるのではないかと思います。
お気に入りのナガエミクリを前景にも植栽し抜け感が保つように植栽範囲を注意した。
- 制作から完成を踏まえて、感想をお聞かせください。

今回の水景は、個人的にはイメージ通りの仕上がりで気に入っています。景観には、レイアウトの制作意図はありつつも、基本的には水草の生長による景観の移ろいや変化は感動的だなと思いました。透明感のある種類を植栽しているので、水草らしさを再認識するようなそんな水景になったと思います。また、ある意味自然に水草が繁茂してつくっていくという手法はまた試していきたいと思っています。ただ水草が飲み込んでいけばいいというだけではなく、自然にコントロールするというのがこの水景のメンテナンスにおけるポイントの一つだと思っています。下草のインディアンクラススラは少し飲み込み過ぎかなという印象はありますが、全体としては、水草の茂みから出てくる魚の観察が楽しくなるような水景になったと思います。

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