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CREATOR WORKS [ 森の交差点 ]

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
ⒸAQUA DESIGN AMANO
[ 森の交差点 ] この水景は長期維持を前提とした魚たちが安らげる環境づくりをテーマにしている。言わばネイチャーアクアリウムの原点に立ち返ったレイアウト制作となった。魚たちは左右に活発に泳ぎ回ったり、ときには流木のアーチ下の空間に集まったりと、その意図した通りの様子を見たとき魚と気持ちが通じ合えたような感覚を覚えた。
植栽 2022年12月1日撮影
完成 2023年3月23日撮影
DATA
制作日:2022年11月30日
撮影日:2023年3月23日
制作:内田 成(ADA SUIKEI CREATOR)
水槽:キューブガーデン W1,800×D600×H600(mm)
照明:ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルター ES-2400(バイオリオG)
素材:ホーンウッド、渓石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.Ⅱ、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC、トロピカルリバーサンド、コロラドサンド、玉砂利
CO2:パレングラス・ビートル 50Ø、CO₂ツイストカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ニュートラルK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:50mg/L

水草:
1 アヌビアス・ナナ
2 アヌビアス・ナナ・プチ(BIO)※
3 アヌビアス・コーヒーフォリア
4 アヌビアス・バルテリー
5 ミクロソラム・プテロプス
6 ミクロソラム・ナローリーフ
7 ボルビティス・ヒュデロッティ
8 ブリクサ・アウベルティ
9 ブリクサ・アウベルティ‘レッド’
10 タイガーロータスグリーン
11 タイガーロータスレッド
12 ソーシャルフェザーダスター
13 ルドウィジア・イールトリコロール
14 ロターラ sp. フラワー
15 クリプトコリネ・アクセルロディ(BIO)※
16 クリプトコリネ・ウェンティ グリーンゲッコウ(BIO)※
17 ヤマサキカズラ
18 リュウノヒゲ
19 ウィローモス(モスバッグ)※
20 南米ウィローモス

魚種
アフリカンムーンテトラ
ゴールデンコンゴテトラ
ブルーダイヤモンドコンゴテトラ
バジスバジス
サイヤミーズフライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

ⒸAQUA DESIGN AMANO
※はADA生体製品ラインナップです。

SUIKEI CREATOR INTERVIEW


内田 成 Naru Uchida
魚たちの気持ちになって水景づくりを考える

- まずは水景コンセプトから聞かせください。

今回の作品は「森の交差点」というタイトルで、中央の流木が交差している所がちょうどトンネルのようになっていて、いろいろな種類の魚たちがその空間を潜り抜けたりする様子が観察でき、この水景の一つの見所になっています。構図の様子からわかるように直線状の枝ぶりのホーンウッドを主に使用し、放射状に広がる枝が交差するように組んでいます。そして交点となる部分にシダを配植してます。こうすることで密生部分と空間部分が明確になり、魚たちの遊泳空間が生まれます。またそれが水景としても程よい“抜け感”となり、視点を水景奥へと誘います。今回は特に自身の記憶などからではなく、流木や石など素材からインスピレーションを受けて制作しました。そして最終的に思い描いていた完成イメージは、先ほど言った抜けの部分やヤマサキカズラやシダが大きく生長することによって生じる陰の部分などが魚たちの安らぎの場になればということでした。この水槽は奥行きが600mmと広いので、流木のトンネルを潜って前後の空間を魚たちが行き交う様子を想像しながらレイアウトを制作しました。「森の交差点」というタイトルの通りアフリカンムーンテトラ、ゴールデンコンゴテトラ、サファイアコンゴテトラの3種類の魚たちがそれぞれに遊泳し、交差点となる中央の空間では賑やかに行き交うように泳いでくれたらいいなとか、とにかく魚の泳ぐ姿を終始思い浮かべながらの制作でした。

- 構図の段階では流木の力強さが印象的に思えますが、その意図はどうでしょうか?

水景の抜け感にもなる魚の遊泳スペースの確保を意識して構図を組んだのですが、水景を長期維持することも考慮して、しっかりとした構図を組もうと考えました。その点では天野宅に設置されている4m水槽での流木の組み方、骨格構成を参考にしました。あの水景は20年以上も維持されているので絶対正解だろうと(笑)。長期維持されている水景は、どういう構成なのか改めて考えて、初心に戻って勉強する目であの水景を見ると今更ながらに天野 尚の管理面を考慮したレイアウト構成の凄さを痛感する思いでした。

 
構図 2022年11月30日撮影
- 長期維持を前提に水草の植栽はどのように気をつけたのでしょうか?

私は長期維持で大切なのは空間だと思っています。水草は生長していくにつれてスペースが埋まり、光が十分に取り込めなくなった種類は衰退が始まったりします。景観を維持するためには空間を確保し水草に効率よく光を届ける必要があります。それに加え植栽の構成も重要です。たとえばミクロソラムなどのシダが大株になってしまうと、その下の下草などは徒長してしまう種類もあるので、シダの下には陰生植物を植栽するなど、光と植物の性質を考慮して植栽構成を考えました。植栽プランは前方から後方へかけて平面的に考えがちですが、上下の位置関係も非常に大切です。また手前の空間は水草を植えずに化粧砂を敷きましたが、これによってスイレンの浮葉やシダの葉によって光が遮られたとしても水底が明るい印象に保てる効果と魚の遊泳スペースとして空間が長期維持できるようになっています。なお水草が繁茂してくると水の淀みができ藍藻が発生しやすくなるので、通水性なども配慮しレイアウトを構成しています。長期維持ではこうした配慮も大切であり、レイアウト構成なども4m水槽を参考にしました。

 

- 活着性水草も多用していますが注意した点とかはありますか?

構図が作為的になってしまっていたので、流木同士の交点に活着性水草を配置しました。交点が活着性水草によって隠れ、作為的な部分が和らぎ自然な感じになればと思いました。流木の根元の部分も活着性水草で固めましたが、アヌビアスなどは生長点の向きに注意しどの方向に生長してもらいたいか考えて配置することが大切です。またここでは葉の大きさの異なる2種類のアヌビアスを使い自然感を演出しています。

 

- 次に底床についてですが、化粧砂を選択した理由を聞かせください。

これは遊泳空間を確保するためにソイルではなく化粧砂を選択しました。また渓石との色調バランスを取るためにトロピカルリバーサンドにコロラドサンドを混ぜて色調整をしてます。

 

- では、あえて渓石も色味を意識して選んでるのでしょうか? ピンクっぽいものは選ばないとか。

特に色では判断してなかったのですが、どちらかと言えば赤味があるのも選んでます。水中で時間が経つにつれて自然と藻類が付着し色味が変わってくるので、化粧砂と馴染むようにしました。本来であれば石に付着した藻類は擦ってメンテナンスをするものですが、この水景ではあえて擦らないときもあり、空間の流木のアーチ部分と石と化粧砂の色合いにも注意し管理を行いました。水景の趣として時間が生む石の風合いもあると思うので、石に薄く付着する藻類は必ずしもきれいに擦らなければいけないというわけではないと思います。擦り過ぎてしまうと他との風合いのバランスが崩れてしまいかえって違和感を生み出すパターンもあるので、水景の演出部分では大事な管理ポイントだと思います。
自然感を演出するため、活着性水草の配置場所に気を使った。
渓石と色味が合うように化粧砂を配合。土留めとして石の隙間もしっかりと化粧砂で埋めた。
- その他、管理などで気を付けた点はどこでしょうか?

管理し過ぎないことです。先の話にも通じるのですが、手を入れ過ぎると逆に作為的になり過ぎて不自然になってしまうのです。ときには水草の生長に任せることも必要でこの見極めが難しいところです。特にこのタイプの水景では整え過ぎては駄目で、ADAではチームで水景を管理するためこの曖昧な感覚を共有する難しさもありましたね。

 

- 魚は個性的な魚種が選ばれていますが、その選択理由などを聞かせください。

今回は流木の印象というかインパクトが強いので、作品として撮影したときに負けないようにある程度大きさがあって体形のシルエットがはっきり見える魚種がいいかなと考えました。小型魚を群泳させるパターンもありますが、左右に流れるように泳ぐよりは交差点となる中央の空間で戯れて泳ぐ雰囲気がコンセプトに合っているなと思いました。最近は特に魚たちの居心地を意識するようになりましたが、それもADAの水景クリエイターとして大事な感覚だと思っています。

 

- 今回はそういった魚の棲息環境がポイントになる感じですね。

そうですね。ただ、本当にある自然の棲息環境ような水中景観を再現したとしてもそれはアクアリウムとしてはおそらく退屈であり、自然を超える美しい景観の中で魚たちが自然の水域で泳いでいると錯覚してしまうような水景の創造こそがネイチャーアクアリウムの目指すべき方向だと思っています。そういった意味においては、今回の作品制作はネイチャーアクアリウムの本質や理念を再認識するよい機会にもなりました。本誌では完成水景として紹介させていただきましたが、本当は次期早々であと3年、5年とか維持していくとまた違った表情を見せてくれたと思います。

 

- 今回の作品でお気に入りの部分はありますか?

まず魚が心地よく泳げる環境づくりという点では(たぶん)成功したかなと思います。タイトル通り交差点となる空間で時折魚たちが集まって遊泳してくれている様子を観賞できる点がいいですね。あとは水上のヤマサキカズラの勢いに対してミクロソラム2種のボリューム感がマッチしたことも全体的によくまとまった要因であり、天野宅の4m水槽に雰囲気も似てきて気に入ってます。実はこのレイアウト制作の後にAOAO SAPPOROのレイアウト制作が控えていたのですが、この水景の制作経験がAOAO SAPPOROでの新たな創作活動にいい影響を与えてくれた点も良かったですね。

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