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CREATOR WORKS [ グリーン・アンド・ブルー ]

CREATOR WORKS [ グリーン・アンド・ブルー ]

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
ⒸAQUA DESIGN AMANO
[ グリーン・アンド・ブルー ] 龍王石を積み重ねるように配置し、その間に生じる隙間を水草の植栽スペースとすることで緑と青のコンビネーションを表現した。魚たちは高原を吹き渡る風のように颯爽と泳ぎ、暑い夏に気分を涼やかにする水景となった。しかしここに至るまでは、植栽プランの変更など課題を残す制作となった。
DATA
制作日:2023年6月23日
撮影日:2024年7月3日
制作:井上 大輔(ADA SUIKEI CREATOR)
水槽:キューブガーデン W1,500×D600×H600(mm)
照明:ソーラーRGB ×3(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルター ES-2400(バイオリオG)
素材:龍王石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル 50Ø、CO₂ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:50mg/L

水草:
1 パールグラス(BIO)※
2 ウォーターローン(BIO)※

魚種
ハイフェソブリコン・アマパエンシス
サイヤミーズフライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

ⒸAQUA DESIGN AMANO
※はADA生体製品ラインナップです。
植栽 2023年6月23日撮影
完成 2024年7月3日撮影

SUIKEI CREATOR INTERVIEW


井上 大輔 Daisuke Inoue
新たな表現の探究と失敗
- 井上さんの作品としては珍しく龍王石がふんだんに使用されていますが、どういう経緯があったのでしょうか。

ADAの作品は今は5人のADA水景クリエイターが制作を担っていて、その水槽は本社内のネイチャーアクアリウム・ギャラリーに設置されているわけですが、水景のタイプなど全体のバランスを考慮して制作しています。私たちの制作する作品は、ADAの水景として紹介されるので水草、魚、構図素材などについて、ある特定のものに偏り過ぎないようにしています。そうした事情もあり龍王石を使用することになったのですが、私たちは自分が好きな素材だけを使ってレイアウト制作をしているわけではないのです、プロですから。でもこういう制作プロセスは、個人的には嫌いではありません。自分の好みや使いやすい素材だけでレイアウトを制作しているとすぐにマンネリ化してきたり、表現がパターン化してきて新しい表現が生まれにくくなってしまうからです。しかし今回の制作のように自分の好みに関わらず、龍王石を使うという規制があると、何かアイデアがないかと考えるようになるので、違った表現を生み出す可能性が高まる感じがありますね。

- なるほど。では今回その龍王石をどう使おうと考えたのでしょうか。

まず考えたことは、ADA水景クリエイターの作品では石を斜めに立てた配石パターンが多いので、石を寝かせてみようということでした。龍王石には独特の白い筋と溝があるので、その目というか流れを横方向にいかしたらまた違った雰囲気の龍王石のレイアウトになるのではと思いました。そうなると石を横にして積むことになるのですが、大きな溝がある龍王石でも平滑な面がある石もあるので、不安はありましたが案外積み重ねやすかったですね。
構図 2023年6月23日撮影
- 井上さんのレイアウト手法としては、石を積むってよく使われるイメージがあるのですが、その意図は何ですか。

確かに言われてみれば、石を積むっていうパターンは結構多いですね(笑)。その理由を自己分析してみるのですが、植栽範囲に高低差をつくれるという点に表現の魅力を感じているからでしょうか。普通に石を組んでしまうと、前景から中景の部分がフラットまでいかないにせよ平面的になりやすいのですが、この水景で言えば右サイドの石を積んだ合間が少し高い位置の植栽スペースとなり、そこに横に這うタイプの水草を植栽すると立体感というか独特な水草の茂みが生まれその起伏というか雰囲気が好きなんです。石の組み方としては、ただ積み重ねるのではなく、石を積み重ねつつ植栽スペースをここにつくろうとか考えていますね。石と水草で起伏ができると、水景を写真に撮ったときでも立体感が感じられるようになります。
龍王石の溝を利用し、小さめの石を下に固定しながら即興的に石を積み上げていく。
軽石を厚めに敷き詰め背面の植栽スペースに高さを出した。
- 普通は最初に配石をして、その後に植栽スペースを決めると思うのですが、このレイアウトでは石を積み重ねながら植栽スペースも決めていったということでしょうか。

そうですね。このレイアウトの場合は石の仮組みなどもしないで、即興的に石を組みながら水草の植栽スペースも決めていきました。ただこうした手法を取る場合には、最初に水草を何を植栽するか決めるもしくはイメージしておくことが必要です。レイアウト制作のアプローチとしては、大きく分けて構図優先パターンと水草優先パターンがあると思うのですが、自分の場合ですと水草優先パターンが多い気がします。
積み重ねた石と石の間に植栽スペースを設けることで高さを出した。
最初の植栽時はさまざまな水草を使用して起伏をつけ、より立体的な水景の予定であった。
- 今、水草優先パターンとお聞きしましたが、実は最初の植栽パターンは失敗したとお聞きしましたが……。
失敗というか、思ってた以上に短期で完成したのですが、その後の景観維持が難しく、最終的には今の植栽パターンに変更しました。当初は無機質な龍王石の合間にカラフルな有茎草を植栽すると、今までのADA水景クリエイターの作品にはない表現の水景ができるのではないかと目論んでいたのですが、一度は完成したものの有茎草を短く刈り込んで維持するのが正直困難でした。もちろんいったん生えそろった段階で写真を撮って完成とすることもできましたが、それは自分の中で腑に落ちない点もあって撮影はせずに植栽パターンと前面の底床も化粧砂からアマゾニアVer.2への変更を考えました。それでウォーターローンとパールグラスを使用することにしました。寒色系の龍王石に緑一色の水草は涼感が感じられ暑い今の季節にはぴったりです、という感じの水景になってしまいました(苦笑)。

- 最初の植栽パターンから今の植栽に変更しても、井上さんのレイアウト意図は反映されたものになっているのでしょうか。

カラフルさはなくなってしまいましたが、龍王石の層に水草の茂みで起伏をつくるというレイアウト構成は実現できてよかったと思っています。そういう意味ではやりたいことはできたかな、という感じです。本当はニューラージパールグラス、インディアンクラススラ、ベトナムゴマノハグサなどさまざまな水草を使っていろいろな所に細かく起伏をつけようと思っていたのですが……。また機会があれば挑戦してみたい表現ではあります。

- 今回のレイアウト制作では反省点もあったようですが、その他に制作を通じて感じたことはありましたか。

普段は立てて配石することの多い龍王石ですが、意外と石の溝というか窪み同士が噛み合って、積み重ねる手法にも向いている石素材だなと感じました。ただ、今回のように龍王石は多く使い過ぎると水質に影響を与えるため、水質管理テクニックも必要になってきますね。また今回制作した水槽はW1,500mmだったのですが、縦横比のバランス的にも制作しやすく、奥行きもD600mmあるので、どちらかと言えばW1,200mmよりもW1,800mmに近いレイアウト感覚でした。水槽の設置スペースとレイアウト表現の可能性を考えると絶妙なサイズだな、と改めて思ったしだいです。

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