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CREATOR WORKS [ 幻想の水辺 ]

CREATOR WORKS [ 幻想の水辺 ]

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
ⒸAQUA DESIGN AMANO
[ 幻想の水辺 ] 清らかな水が流れる幻想的な水中世界を表現するために制作した水景であるが、その景観の形成においてはある程度水草の生長に任せてみた。そのため雑然さはあるが、野趣にあふれ草むらのような自然感が私は気に入っている。
DATA
制作日:2023年2月2日
撮影日:2023年10月19日
制作:本間 裕介(ADA SUIKEI CREATOR)
水槽:キューブガーデン W1,800×D600×H600(mm)
照明:ソーラーRGB×3(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルター ES-2400(バイオリオG)
素材:ホーンウッド、山水石
底床:アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル 50Ø、CO₂ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、グリーンブライティ・ニトロ
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.2 TH:50mg/L

水草:
1 ラガロシフォン・マダガスカリエンシス
2 アポノゲトン・ウルバケウス
3 エリオカウロンsp. ソーシャルフェザーダスター
4 サジタリア・スブラータ
5 ツーテンプル
6 ミリオフィラム sp. ガイアナドワーフ
7 ブリクサショートリーフ(BIO)※
8 エキノドルス・テネルス(BIO)※
9 クリプトコリネ・ウエンティ・ブラウン(BIO)※
10 ポタモゲトン・ガイー
11 ロングヘアーグラス(BIO)※
12 ヘアーグラス(BIO)※
13 リシア(BIO)※
14 南米ウィローモス
15 プレミアムモス(BIO)※
16 ウィローモス(モスバッグ)※

魚種
イエローコンゴテトラ
サイヤミーズフライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

ⒸAQUA DESIGN AMANO
※はADA生体製品ラインナップです。
植栽 2023年2月2日撮影
完成 2023年10月19日撮影

SUIKEI CREATOR INTERVIEW


本間 裕介 Yusuke Homma
追求したのは草むらのような美しさ

- 水草の勢いを感じる作品ですが、やや雑然とした印象も受けます。そこは狙いでしょうか。

水景は人の管理と水草の生長によって形成されるわけですが、この作品では水草の生長に任せる割合を多くしています。正直言ってそれは最初からそう思っていたわけではなくて、長期維持しているうちにこの水景は水草の生長の勢いを表現としていかしたほうがいいなと思いました。雑然とした印象を与えるのもそのためだと思いますが、そこが狙いでもありました。

- なるほど。そのポイントとなる水草がサジタリア・スブラータでしょうか。

そうですね。水景全体の印象としては、爽やかな水の流れと幻想的な水辺を意識して制作したのですが、この作品の特徴としてはランナーで伸びるテープ状水草を多用してるところですね。最近制作してきた作品の中でのテープ状水草は、エリオカウロンsp. ソーシャルフェザーダスターなど株が大きくなるだけでランナーを伸ばさないタイプが多かったんです。それはなぜかというと、水景の景観維持を考えると自由自在にランナーを伸ばすタイプの水草は管理が大変なこともあり、その使用においてはどこか消極的な気持ちがありました。しかしこの作品においては管理をしていくうちに、ランナーを伸ばすサジタリア・スブラータの様子から生命力というか勢いを感じたんです。この感じは人為的には表現できない面白さもあるし、自分の想像を超えてくるような生長の仕方に草むらのような美しい自然感を覚えました。

- まさに水草がつくり上げた水景という感じでしょうか。

以前の話しになりますが、天野 尚が制作した水景は私たちが維持管理をしていましたが、天野の場合はあまり細かい管理指示はないんです。うまく言葉にできないのですが、感覚なんです。極端に言うと管理しすぎては駄目で、水草の生長をいかすことが大切だと教わりました。今回の作品を制作、管理しながらそんなことを思い出しました。水草がつくり出す水景の面白さや美しさを改めて感じた作品だったと言えると思います。

- 水草の生長に任せるという管理での難しさはありますか。

管理という点では花壇のように水草ごとにゾーニングされていれば、そこからはみ出した水草をカットすればいいので明確で楽なのですが、水草の生長に任せた管理というのは不明確で正解がないんです。あくまで感覚であり、自然感の見出し方をどう判断するかなのです。こうした場合は、どれだけ実際に自然を見てきたかという経験値が大切なのではないかと私は考えています。ADAでは水景の管理スタッフがいるのですが、こうした感覚を共有するように努めています。

- では具体的な制作面での質問になりますが、案外細い流木を使っていますがいかがでしょうか。

爽やかなイメージにもしたかったので、流木の強さは必要ないと思いました。そのため細目の流木を使って、しかもあまり主張しないように枝などを立たせることなく流木を組んでいます。イメージ的には水流で倒れたような感じです。流木はあくまで骨格であり、主張しすぎないほうがこの作品にあった自然感が表現できると思いました。
構図 2023年2月2日撮影
- 構図素材は流木以外に山水石を使用されていますが、そのほとんどが完成水景からは見えなくなっています。その点はどう考えたらいいのでしょうか。

流木は6本くらい組み合わせて使用していますし、流木の下には山水石をいくつも置いています。確かに完成水景からは、見えなくなってしまっているものがほとんどですが、制作段階ではこれらの構図骨格が水草植栽のガイドライン的な役割を果たしてくれるのです。また流木や石を組むことで植栽イメージも膨らみますし、とても重要な存在です。構図骨格はたとえそれ自身が見えなくても、水景の陰影として影響を及ぼしたりもします。存在そのものが大切って言ってしまうと難解かな(笑)。
構図素材があるからこそ細かな植栽が行えることがわかる。
- なるほど。では、次に水草の植栽ポイントについて聞かせてください。

爽やかな印象にするためにあえて赤系水草は使用せず、さらにグリーンの色合いもここではできるだけ合わせるように水草の種類を選んでいます。また水の流れを演出する水草としてアポノゲトン・ウルバケウス、エリオカウロンsp. ソーシャルフェザーダスターを使用し、右後ろにリリィパイプの出水口を設置して、背景のテープ状水草が左側に向くようになっています。さらに左サイドのミリオフィラム sp. ガイアナドワーフ、ラガロシフォン・マダカスカリエンシスなどは、流れ着いた水草がやがて群生したようなイメージです。背景は右から左に流れがあるのですが、手前の下草は左から右の流れるイメージになっていて、それがすごくバランスがいいと思いました。それはリリィパイプからの実際の水流の影響でもあると思うのですが、それが渦を巻く清流のようなイメージでとてもいい雰囲気だなと。魚たちも水流に戯れて泳ぐように感じられますよね。
水景に水の流れを演出するためテープ状水草を多く植栽した。
左サイドに群生感を出すためミリオフィラム sp. ガイアナドワーフ、ラガロシフォン・マダカスカリエンシスなどを植栽した。
あえて右後ろにリリィパイプの出水口を設置し、背景のテープ状水草が左側に向くようにした。
- そうですね。水景全体から水の流れや涼感が伝わってきます。では最後にこの作品制作を通じて得られたものはなんでしょうか。

水草自身の生長にある程度任せた水景のほうが生命力が感じられ、野趣あふれる雰囲気になるので、こうした感覚、表現を含んだ作品を制作していきたいと思っています。もともと私は風光明媚な景色よりも、野辺の草むらに魅力を感じるので、そのほうが自然体で水景制作も行えるような気がしますね。

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