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すみだ水族館レポート Vol.03

mizunotakahito
当時世界最大のネイチャーアクアリウムとして誕生したすみだ水族館の「自然水景」も制作から9年が経過しました。 これまであまり語られることがなかった舞台の裏側を連載でお届けします。
「草原と石景」 W710×D110×H120(cm) 2020年11月撮影

水中の草原


30年も前に天野 尚が石組レイアウトで使用したことがきっかけとなり、水草レイアウトでは最もポピュラーな下草となったグロッソスティグマは、ここすみだ水族館の7メートル水槽でも主役級の活躍をしています。壮大な草原と山の風景を表現したこの水景にとって本種は正にうってつけの下草ですが、水深1メートル超の水槽における育成例はなく、その管理ノウハウはこの水景の中で磨き上げてきました。まず、陽生水草である本種を長期間維持するには生長に合わせた施肥が欠かせません。植栽範囲が広いため場所によって生長に差が生じることもあり、毎日の液体添加剤は勿論、生長が遅れがちなポイントにはボトムプラスの追肥量を調整しています。逆に生長が速い箇所は周辺に合わせたトリミングが必要になります。その際に厚く重なるように生長した状態から深くカットしてしまうと見た目が悪いだけでなく、新芽展開にも時間が掛かってしまいます。したがって毎日の展示状態をキープするためには、小まめにトリミングしながら生長の均一化を図る必要があります。このような繊細な作業を水槽の上から行うのは非常に困難で、専用ツールの開発も不可欠でした。改良を重ねた今では通常サイズの水槽と同じレベルの正確なトリミングが可能になり、現在のようにグロッソスティグマの美しい草原を実現するに至っています。
試行錯誤の末に完璧な草原をつくり上げた。

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