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オープン・グリーンラボ 「赤くなる植物たち」

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
水草に限らず植物体内では色素合成が行われており、なかでも赤系の色素は、環境応答や二次代謝などによって産生されることが知られている。我々はその鮮やかな発色を観賞し楽しむことができている。ここでは植物の持つ色素について解説し、赤系水草を楽しむうえでの予備知識を紹介しよう。
自然界における色素の役割
植物が赤くなる現象として、私たち日本人に馴染み深い「紅葉」という自然風景が思い当たるだろう。気温や照度などが生長に対する要求量を下回る、秋から冬にかけて生じる生理現象の一つである。気温や照度以外にも、あらゆる要因が植物に対しストレスとなることで、それに対抗するべく色素を含むさまざまな代謝物質を産生する。環境的ストレスとしては、強光や乾燥、水没、塩害といった要因が挙げられる。光環境において光合成に必要な光が強すぎると、消費し切れない光エネルギーによって活性酸素が生じ、細胞が損傷を受けることがある。植物によっては、強光量や光に含まれる紫外線から自身を守るためにアントシアニンやケルセチンといった色素を産生することが知られている。
強光ストレスに応答して葉緑素をはじめとする細胞組織を保護するはたらきをもつアントシアニン類が産生される。

 
水質と色素
代表的な赤い植物色素としてアントシアニンが有名だが、この色素は、植物細胞内にある液胞のpHによって色が変化することが知られている。また液胞内に取り込まれた金属イオンにより錯体が形成されることで、吸収する光の波長が変化するため同じ水草であっても水質により葉色が異なる。
pHによって赤~黄色に近い色味となり、鉄イオンやマグネシウムイオンを中心とした錯体が形成をされ変色する。

 
水槽内で赤くなるメカニズム
自然界では根域もしくは植物体全体が水没した際に、低酸素による酸素欠乏がトリガーとなり赤系の色素合成が起こることが知られている。ネイチャーアクアリウムでは二酸化炭素を添加することにより、水中の二酸化炭素が飽和に近づき、ガス交換効率が低下し疑似的な酸欠がトリガーとなることが考えられる。水槽用照明器具の発展により水中へ強い光が到達するようになり、色素産生の促進が可能となった。その結果、従来よりも光合成が活発になることで糖類生産および赤系色素の合成が促進され、鮮やかな発色が観賞できるようになった。
気中の葉は緑色だが水没している葉が赤く染まり始めているチョウジタデ。水位変動など環境変化に対してたくましく適応をしている様子が見られる。
 

ネイチャーアクアリウムにおける醍醐味の一つには多様な水草の栽培が挙げられる。その中でも目を惹く赤い水草について既知の栽培手法は必ずしも多くないため、赤系水草のよりよい観賞のための水質や光の波長、適切な光量といった栽培環境を含めた栽培方法について今後も調べていきたい。

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