ADA

ネイチャーアクアリウム クロニクル 2000-2009

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部

未来を見据えたひとつの原点


2000-2003
2001年、天野は自邸にW400×D150×H150(cm)の超大型ネイチャーアクアリウムを完成させた。その管理システムは、太陽光の入射に応じたCO2添加や換水などをオートメーション化したものだった。メインの照明には水草育成用に独自開発されたメタルハライドランプ「NAMH-150W」を採用。そして、その光を取り入れた水草育成用照明器具「ソーラーⅠ」が誕生する。つり下げ式照明のシンプルなデザインと水面からも熱帯魚や水草が観賞できる開放的なスタイルは、アクアリウムをインテリアとして室内に溶け込ませた。この天野自邸の超大型ネイチャーアクアリウムは、その後に続く水族館への巨大水槽の設置や管理の基礎データ収集に役立つとともに、2001年から開催されている「世界水草レイアウトコンテスト」の関連イベントであるネイチャーアクアリウム・パーティーなどで参加者限定で公開されてきた。アクアリストなら一度は見てみたい憧れの空間と言える。
ネイチャーアクアリウムとビオトープの庭が連なるこの空間は天野の理想でもあった。
水槽 W400×D150×H150(cm) / 撮影日 2004年

広がる石組の表現手法


2004-2006
水槽の中に石や流木を入れて構図を組むというレイアウト手法は、ネイチャーアクアリウムによって確立されたと言っても過言ではないだろう。中でも石組レイアウトのシンプルな表現は特徴的であり、極めて斬新だった。初期の石組レイアウトは、角の丸い仙見川石や八海石などの川石でつくられることが多かったが、その後発売された「龍王石」や「万天石」などの形状と質感の異なる石が加わることで表現の幅はさらに広がった。その水景からイメージされる景観は、川だけでなく、海、山、草原にまで及んだ。配石においても基本である三尊石組だけでなく、岩礁や山岳地帯のように石を連続的に配した技法も確立され、植栽する水草や泳がせる魚のバリエーションと組み合わせで多種多様な表現が生まれることになった。
荒々しい印象のある龍王石も寝かせて使うことで大らかで広がりのある印象となる。表面の凹凸や白い筋の向きに共通性をもたせ、土の中で石がつながっているような自然な状態を表現している。
水槽 W180×D60×H60(cm) / 撮影日 2006年9月
複数種の水草を植栽することで植物の階層的な構造を再現し、配石と盛土を工夫することで小さな水槽でも遠近感を演出することができる。
水槽 W60×D30×H36(cm) / 撮影日 2005年5月
3石2群で構成された石組レイアウト。底床は化粧砂とアクアソイルを敷き分ける手法を用いており、左右のスペースの構成は黄金比(1.618:1)でバランスをとっている。
水槽 W90×D45×H45(cm) / 撮影日 2005年7月

緻密な植栽と繊細な管理


2007-2009
ネイチャーアクアリウムの普及や素材の充実、技術向上に伴い、しだいにバリエーション豊かな水景がつくられるようになった。複雑なレイアウトでは繊細な植栽、管理が必要となり、レイアウト・メンテナンス用品にもそれに対応する多様な機能性が求められた。そうした背景もあり、この年代には用途に合わせたユニークなツールが誕生した。それらの中でもひときわ特徴的な「プロシザース・ウェーブ」も、日々の水草の維持管理の中で生まれたアイデアや改善点が形になったものであり、使用する際の角度によって細かな部分のトリミングから前景草(下草)などの広範囲なトリミングまでをスムーズに行うことができる。さまざまな用途によってツールを使い分けることで、ネイチャーアクアリウムはより完成度の高い仕上がりになっていった。
より使いやすく進化したツールで、高い密度での植栽と適切なトリミングが可能となった。
水槽 W180×D60×H60(cm) / 撮影日 2009年10月
多彩な背景の有茎草には佗び草が使用されている。植栽密度があがるだけでなく、大型水槽レイアウトの作業時間短縮にもつながっている。
水槽 W240×D60×H60(cm) / 撮影日 2009年10月
次回「ネイチャーアクアリウム クロニクル 2010-2009」に続く。

POPULAR POSTS注目の投稿