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ADA SUIKEI CREATORS #04「内田 成」

内田 成内田 成

SPECIAL FEATURE 「ADA 水景クリエイター」


2ヵ月間に渡って開催された「NATURE AQUARIUM EXHIBITION 2021 TOKYO」(以下NAE)。5人の水景クリエイターそれぞれが現在のベストを表現し、継承したネイチャーアクアリウムをさらに広めていくスタート地点となりました。 好評のうちに閉幕した今、彼らの心境や今後の目標について訊ねてみたいと思います。

最高のコンディションを維持するために、常に水景と向きあう


水の中の紅葉は東京で見頃を迎えた
NAEはちょうど9月開催だったので、秋を題材にした水景をつくろうと思い、1年半ほど前に制作した紅葉をモチーフにした90cm規格の水景を、180cmにスケールアップする形で制作しました。八海石やアクアグラベル、川石を使用し、「和」をサブテーマとし、構図は凹型と決めていましたが180cm水槽になると、パノラマ比率になるので図屏風の構図バランスを参考にしました。また、すみだ水族館での管理スタッフとしての経験から、東京の水質がミネラル分を適度に含み、赤い有茎草を美しく育てるのに向いていることがわかっていたので、最高の状態で「水の中の紅葉」をお届けできるという自信はありました。有茎草は思惑通り時間の経過ともに真っ赤に染まり、晩秋の訪れを教えてくれました。
感動は、裏側のひたむきな管理があってこそのものと情熱を注ぐ。
水景維持に情熱を注ぐ
今回、NAE会場に常駐する管理スタッフのリーダーを務め、お客様に見ていただく水景を最高のコンディションで維持することに注力しました。また水草育成器具メーカーとして、器具の魅力を認識してもらうことも大切だと考えました。器具がきれいでないと、水景の本質ではない箇所に目がいってしまうので、器具の念入りなメンテナンスと配置の微調整、水槽の拭き上げなどを開場までに毎日徹底的に行いました。管理面では、開場時間と管理の都合上、照明の点灯時間が11時間と通常より長かったので、藻類の発生が一番頭を悩ませました。最初は照明の位置を上げて対応しようと考えましたが、照度が下がった分、次は水草の生長が著しく低下することが予想されました。水草のもつ美しさや生命力を見ていただくイベントですので、それでは本末転倒になってしまいます。普段の業務の経験から、藻類の抑制と水草の生長が釣り合った照明の高さを見極め、またメンテナンスフィッシュの追加により、なんとか水景のバランスを維持しました。実は、水槽ごとに照明の高さを微妙に変えていました。現場では常に水景と向きあって、アクシデントに臨機応変に対応できることが大切です。会期中は解説スタッフとして会場に立つ機会もありましたが、これまでコロナ禍で聞けなったお客様の感想を直接お聞きすることができて純粋にうれしかったですし、仕事のモチベーションアップにもなりました。

制作意図を反映した管理
私は水景クリエイターとして、ネイチャーアクアリウムの魅力を広めたいという思いがありますが、普段はネイチャークリエイション部の一員として水景のメンテナンスの業務をメインに励んでいます。今回の水景メンテナンスでは、制作者の意図を反映できるように水景クリエイターとしての視点から考えて管理スケジュールを計画する必要がありました。さらに制作者が思い描く完成水景に近づけるためには、ヒアリングは必須で、特に「エキノドルス・パラダイス」は荒木さんとディティール表現の確認まで綿密にやり取りしました。逆に井上さんの「グリーン・ヘブン」は細かい部分は任せてもらえました。あのアマゾンチドメグサは一見、無秩序に漂っているように見えますが、ランダムな中にも規則性や統一感をもたせるトリミング管理が必要で、このバランス感覚はクリエイターの活動で培った感性が生きていたと思います。

自然から学ぶ
ネイチャーアクアリウムは自然をそのまま模写するのではなく、自分の感性で抽象化することで、その人のストーリーや内面もアウトプットされるところが、他にはない魅力だと思っています。最近は、「支え岩」のように2つの自然の景観を融合させる手法をよく使っていて、遊び心ある自分らしい水景をつくるという意味で、手ごたえを感じています。私がつくる水景はよく「癒される」「やさしい」という声をいただくので、そこも自分らしさだと自己評価しています。これからもアイデアを広げるためにもっと自然へ足を運びたいと思っています。
「支え岩」
岩礁帯で見られる立岩や洞穴をイメージして制作した水景。石の質感や形状を見極め、2つの石が寄り添うようにしっかりと一つに組み、遠近感が生まれるよう3群に分けて配石した。水草が生えそろった中で、石が互いに寄り掛かり支え合っている様子には安定感があり、この水景ならではの表現ができたと思う。そんな石の合間を颯爽と泳ぐ魚たちも心地良さそうだ。
DATA
水槽:キューブガーデン W120×D50×H50(cm)

水草:
リシア
パールグラス
ニューラージ・パールグラス
エキノドルス・テネルス
インディアン・クラススラ

魚種:
ハイフェソブリコン・アマパエンシス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ
[水の中の紅葉]
赤を基調とした多彩な有茎草を植栽し、屏風絵のようにパノラマ比率で構図骨格を組んだ。その多種多様な有茎草が美しい群生を形成すると、錦繍の紅葉のごとく華麗な、まさに「生きた紅葉屏風」といった狙い通りの表現となった。また、手前の流木に苔やシダを多く活着させることでしっとりと落ち着いた趣が生まれ、その深緑色の補色効果によって赤の色彩がより際立っている。
DATA
水槽:キューブガーデン W180×D60×H60(cm)

水草:
ミクロソラム・ナローリーフ
ボルビティス・ヒュデロッティ
オレンジ・ミリオフィラム
ルドウィジア・スーパーレッド
ルドウィジア・グランデュローサ

魚種:
ラスボラ・ヘテロモルファ
チェリーバルブ
シザーステール・ラスボラ
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

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