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ADA SUIKEI CREATORS #03「岩堀 康太」

岩堀 康太岩堀 康太

SPECIAL FEATURE 「ADA 水景クリエイター」


2ヵ月間に渡って開催された「NATURE AQUARIUM EXHIBITION 2021 TOKYO」(以下NAE)。5人の水景クリエイターそれぞれが現在のベストを表現し、継承したネイチャーアクアリウムをさらに広めていくスタート地点となりました。 好評のうちに閉幕した今、彼らの心境や今後の目標について訊ねてみたいと思います。

植物が「自然に見える瞬間」をレイアウトの中で再現する

規格外展示の苦悩と新たな野望
今回無事に展示を終えることができましたが、ネイチャータワー 360°の企画において課題がいくつかありました。その中でも頭を悩ませたのが、スケールの大きさを壊さないために 8躯体から構成されるユニットを境目なく見せなければいけない点でした。それぞれのウォールをまるで一本の樹幹のように表現するためには、植栽のテクニックだけでは補えない構造自体の見せ方も工夫が必要です。水槽同士の隙間に専用パーツを設計したり、スポットライトを微調整したりして試行錯誤を重ね、なんとか納得のいく展示作品になりました。この経験から、水草ウォールのような垂直の壁面を使った展示水槽の見せ方に確信を持つことができました。ネイチャータワー360°は水辺にまつわる植物の多様性を表現した規格外な展示でしたが、野望はまだまだあり、DOOA製品にフォーカスをあてた空間デザインや、植物を身近に感じてもらうための展示方法など画策しています。
思い返すと、完成にこぎつけるまでにさまざまなドラマがあった。
飽くなき植物の世界への好奇心
ジャングルプランツが息づく陸上の世界には、水草の世界より多種多様な環境が存在します。そのため、レイアウトに一つ植物を取り入れる際も、その植物をとりまく環境を知ることがとても大事で、私の場合、分布域から自生地の気候、土壌の性質まで徹底的に調べます。環境から植物を考察し、レイアウトや管理方法に反映することで、ガラスの中でも少しでも自然に近い姿で育てたいと考えています。その生長過程で拝むことのできる花も魅力の一つです。そのほかにも、グリーンラボ内に専用のバックヤードを併設し、ADAで今まで扱ってこなかった植物、例えばエアープランツやアリ植物など(一部私のコレクションも)を積極的に集めて生育条件を研究しています。DOOAを多くの方に知ってもらうために、あらゆるジャンルの植物をDOOA製品に取り入れ、レイアウトの幅を広げることに日々ばく進中です。植物の世界への好奇心は尽きません。
レイアウトの幅を広げるためは、植物の育成研究は欠かせない。
「自然に見える瞬間」をレイアウトに
ネイチャーアクアリウムでは自然風景の中にあるエッセンスを抽象化して水景に落とし込むというプロセスがありますが、私は少し違って、ふと足元にあるような自然感や小さな発見を大事にしています。自然界の一部をクローズアップした生態そのものが私にとって、自然への憧れを感じる瞬間であり、創作活動の原動力になっています。だからこそ私は作品をつくるうえで、フィールドに赴き感じた「自然に見える瞬間」をレイアウトの中で再現することを常に意識しています。このスタイルは植物自体の美しさを楽しむDOOAのコンセプトにもつながっており、私の性分にもピッタリだと思っています。今後も「自然に見える瞬間」をモットーに、植物の生態にクローズアップした作品を通して、奥深い植物の魅力や自由な楽しみ方を発信していきたいと思います。
[水辺を巡る]
「地球規模で巡る水、それはまるで旅をしているかのよう。ときに雲から雨となり大地に降り注ぎ、霧となり森を包み、川となり海を目指す。その旅路では、さまざまな木々や草花、水草や魚に出会うこともあるだろう。」このネイチャータワー360゜は、そんな「水の旅」を一つのテーマとし、降り注ぐ霧やスコール、水の循環はランダム制御としています。8つのセクションからなるレイアウトは、熱帯地域の水辺(エコトーン)をイメージしているため、植生範囲は水中だけでなく、抽水、陸生、樹着生の植物にまで及びます。タワーを周回すると、各セクションで違った植物相の景観が楽しめるほか、葉が数ミリしかないミミカキグサから巨大な葉を広げるタビビトノキまで多種多様な植物を発見しながら観察できるようになっています。

全高:3.5m
周囲:13m
制作:岩堀 康太

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