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ADA水景クリエイター#02 「荒木 大智」

荒木 大智荒木 大智

ワークショップで感じた「伝える」ことの喜びと最後の世代としての役割


リスボンでの4年間の経験
世界最大のネイチャーアクアリウムとして知られるポルトガルのリスボン海洋水族館に展示中の「水中の森」プロジェクトに初期から携わり、2015年1月には天野尚率いる制作チームの一員として現場作業にも加わり貴重な経験をさせていただきました。制作後はそのまま現地に残り管理スタッフのリーダーとして4年半以上の期間、水景のメンテナンスに携わってきました。今ではノウハウが確立されたネイチャーアクアリウムですが、あの水槽は40mという規格外の大きさでしたので、初期はうまくコントロールできずさまざまな問題に悩まされました。大幅な減光やろ材の変更などを含めた改善策により、何とかオープン前に水景コンディションを持ち直すことができました。そして2015年4月のオープニングセレモニーの際には、もうポルトガルへの渡航は難しいと仰っていた天野社長が来られ「よくやったな」という言葉を頂きました。この日が私と天野社長が話した最後の日となってしまいましたが、この言葉は今でも心に残っています。ただ本当に苦しく大変だったのは、この後のことでした。異国の文化や言語による壁、日々のしかかる問題はもちろん自身のモノサシだけで天野尚の最後の大作となった巨大水景を日々美しく保つというモチベーションの維持など、すべてがプレッシャーとなり自分を見失いそうになることもありました。そんな日々が4年続き、毎日のように思い悩みましたが、本当に得難い経験ができたと思ってます。こうしたリスボンでのすべての経験が国内外でのワークショップや専門学校での講師など、今の仕事の多くのことにつながっていると感じています。

 
天野から託された思い
オープニングイベントを終え「水中の森」の前で、その後の管理ポイントを天野直伝で教わった。管理では潜水作業も行う。

 
リスボンの思い出
異国での生活は苦労も多かったが、何物にも代えがたい経験にもなった。勤務最終日には水族館スタッフが送別会を開いてくれた。

 
海外でのワークショップ
リスボンから帰国した2019年の秋には、ネイチャーアクアリウムパーティーに参加した海外販売代理店向けのセミナーで初めて英語でネイチャーアクアリウムのワークショップを行いました。その際に参加されていたハンガリーのアクアリウムショップ「GreenAqua」からブタペストでワークショップをして欲しいとのオファーがあり、2020年2月に実現しました。私にとって初めての海外でのワークショップ(GreenAquaのYouTubeチャンネルで視聴可能)であり、しかも英語での実施ということでこれもまた大きなプレッシャーを感じたイベントでした(苦笑)。このときは水景クリエイター自身が自分の言葉でレイアウトを説明することの重要性を感じましたし、お客様からもADAスピリットを間近で感じられる良い機会にもなったという嬉しい言葉も頂きました。私はネイチャーアクアリウムとは自然をただ模倣したものではなく、自然のルールやエッセンスを取り込み抽象化した先にある作品だと思っています。そのためアクアリウム以外の感覚や経験もどんどん取り込んで、あらゆる実体験を独自の表現としてレイアウトに反映できたらいいと思っています。
ワークショップでの経験
英語でのワークショップはプレッシャーもあったが、その後の自信にもつながった。これからはもっと世界に向けて視野を広げたい。

 
AMANO最後の世代で思うこと
私は愛知県の生まれですが、高校生のときにネイチャーアクアリウムに憧れてADAのある新潟に行くことを決意しました。そしてADA入社後は、リスボン海洋水族館やすみだ水族館、ネイチャーアクアリウムギャラリーでの水景制作など、短い年数ではありましたが天野社長の間近で多くのことを学びました。今改めて思うとちょうど私の年代が天野作品に触れた最後の世代なのだと思います。あのころ憧れていたネイチャーアクアリウムを、現在はADA水景クリエイターとして私が伝える立場の一人になっていると考えると少し不思議な感覚もありますが、最後の世代として意志を受け継ぎ、私なりにネイチャーアクアリウムを進化させて世界のホビイストに魅力を伝えていきたいと思っています。
「ロータスの水中景観」
レイアウトの要所は基本に従いながらも、自分なりにネイチャーアクアリムを消化した独自の表現を追求していきたい。

 

(ADA水景クリエイター#03 に続く)

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