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TOP OF THE WORLD 2019 #01

TOP OF THE WORLD 2019 #01

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
世界72の国と地域から1,867作品のご応募をいただきました「世界水草レイアウトコンテスト2019」。TOP OF THE WORLD 2019では、その上位作品となるトップ7の作品をレイアウト制作者のインタビューとともに特集いたします。


THE INTERNATIONAL AQUATIC PLANTS LAYOUT CONTEST 2019
世界ランキング1位
GRAND PRIZE
ジョシュ・シム
マレーシア/Dream On

水草


アマ二ア・グラキリス/ブセファランドラsp.キャサリン/クリプトコリネ・パルバ/ウォーターフェザー/ニューラージ・パールグラス/ショート・ヘア―グラス/ウォーター・マッシュルーム/キューバ・パールグラス/ラヌンクルス・パプレントゥス/ロターラ・ロトンジフォリア

魚種


ネオン・テトラ/サイアミーズ・フライングフォックス/オトシンクルス・アフィニス/ヤマトヌマエビ
この作品は2つの大きな流木で大胆に構図が組まれていますが、その流木の配置が絶妙で迫力と遠近感を生み、この水景の印象を決定付けています。最近は細い枝状の流木を駆使して細かな情景をつくるレイアウト作品が多く見られますが、この作品で太く大きな流木を使ったのも、そうした作品傾向とは違った雰囲気を表現する狙いもあったように思われ、このあたりはコンテストを熟知している作者ならではと言えるでしょう。さらに2つの流木の荒れた切り口の形状は野生味や迫力の表現に生かされ、そこにシダや苔ではなくニューラージ・パールグラスが垂れ下がるように仕上げた点など、作者のレイアウトセンスが随所に発揮されています。悪戯にインパクトを狙った要素や技巧的過ぎるところもなく、ネイチャーアクアリウムの手法を取り入れて自分の表現を見事に獲得しています。まさに「正攻法の勝利」と言える作品だと思います。

IAPLC実行委員会 代表 大岩 剛

AJ 今年のランキング結果を見たときの感想を聞かせてください。


ADAから結果通知が発送された旨のアナウンスを見たとき、私は家族といました。なので、3人の子供たちに「今年は家族みんなの前で手紙を開けるね」と約束しました。これは、今までしたことのないことでした。この“手紙”が私にとっていかに大事なものか、きっと子供たちは理解していなかったと思いますが、うれしそうに「OK」と返事してくれました。翌週の水曜日、驚いたことに、その“手紙”はEMSで届いたのです。また上位7位に入ることができた! と、とてもうれしく思いました。早く開けたい、気持ちははやる一方でしたが、家族との約束を守るためぐっと耐えました。家族みんなが集まったときに開封したかったのです。ようやく家族全員が集合したのは結果通知が届いてから3日後のことでした。世界中の友人がソーシャルメディアで自分の順位を公表している中で、私は目の前にある結果を開けずに3日間過ごしました。この3日間は私の人生において最も過酷な3日間でした。“開封の儀”の前日、上位7名のうち5名の受賞者が判明しました。残る2つはグランプリか7位です。つまり私はチャンピオンか7位かのどちらかということです。どちらにせよ素晴らしい順位なのですが……私がどんな気持ちだったか皆さんご理解いただけるでしょう。 そして、ついにその日がやってきました。私は子供たちにEMSを開けてもらい、順位を読んでもらうことにしました。妻の手を握ってその時を待ちました。子供たちはどこに順位が書いてあるのかなかなか見つけられず、時間がかかりました。彼らの声を待つ間、口から心臓が飛び出てきそうでした。そして、突然、「ナンバーワン、ナンバーワン、ナンバーワン」と彼らが叫びだしたのです。みんなで抱き合いました。私の人生における、この素晴らしい 瞬間を家族と分かち合えたことを心からうれしく思いました。 世界中で最も名誉のある水景コンテストにおいて、最高の成績を収められたことを素晴らしく思います。ぜひ天野先生にこの作品を見てもらい、そしてネイチャーアクアリウムの発展を誇らしく感じて欲しかったと思いました。天野先生がつくり出したネイチャーアクアリウムがみんなに夢を与えているということを知ってほしいです。

 

AJ 今回の作品の発想はどこから得たものなのでしょうか。


地元の森林を訪れたのですが、その時期はまさに乾季で小川や川のほとんどが干上がっていました。その干上がった川に大きな木の幹を見つけました。川岸に倒れた木はひどく腐食していましたが、その姿や風合いはとても美しいものでした。私はその木を干上がった川の上で見つけましたが、水中では どんな様子になるのか、その水中風景を再現したいと思いました。雨期になったらここはどうなるのか、苔は水中でどのように生長するのか、この大きな倒木の影は魚たちにどんな素敵な隠れ場をつくり出すのか、私は想像してみました。「ドリーム・オン」というこの作品のタイトルにあるように、私はこの作品で、天野先生が私たちに教えてくれた「夢は叶うまで見続けよう」というこれからも続く夢を表現したかったのです。

AJ 今回のレイアウト制作にあたって最も苦労した点はどこですか。


このレイアウトでは2つの大きな流木を使って干上がった川で見た倒木の幹を再現したのですが、この2つの流木でレイアウトに強いインパクトを与えることが非常に難しかった点です。レイアウトを重くし過ぎないように、そして密集させ過ぎないようにする必要がありました。そこで、影と遠近法を使うことによって思い描いたように表現することができました。また管理面も大きな問題でした。今回のレイアウトでは今まで使ったことのない新しい流木を使ってみたのですが、その流木には水の硬度を急激に上げてしまうほど多くのカルシウムが溶け込んでいるとは知らなかったのです。硬度が高過ぎると水草はうまく生長しません。セットからの2カ月間、水草の状態はとても悪く、苔さえもダメになってしまいました。救済策として、水槽水 半分量の水替えを2カ月間“毎日”行いました。この定期的な換水によって、水の硬度は少しずつ下がり、そして水草はまた生長し始めました。この水の硬度問題ゆえに、このレイアウトは今まで制作した作品の中でも最も難しい作品の一つだったと言えます。

AJ 作品に使用されているレイアウト素材について教えてください。


流木はマレーシア産です。実際に見た倒木の幹へ限りなく近く再現するため、小さな流木を組み合わせて腐食した様子も再現しました。メインとなる流木の配置場所は2~3週間かけてようやく決定しました。今回のレイアウトでは、今まで使用したことのない新しい流木(輸入品)を使用しました。とても素晴らしい風合いなのですが、この流木の使用によって水の硬度が通常の3倍になってしまいました。見た目は良いのですが、管理の大変さはまさに悪夢でした。

 

AJ 水草レイアウトの一番の魅力とは何ですか。


小さな水槽の中で自然の再現を可能にする、これは素晴らしいことです。 自分の限界に挑戦し毎年新しい作品を制作するのは大変ですが、自分を前進させる原動力となっています。

 

AJ 今後、制作してみたい水景はありますか。また、この趣味に関連した達成したいことや夢はありますか


ネイチャーアクアリウムを次のレベルへ押し上げ、天野先生の夢と共に生き、そしてこれから先多くの方々の記憶にずっと残るようなネイチャーアクアリウムをつくり続けていきたいです。私の夢はこの趣味がさらに世界中に広まっていくのを見ることです。そして多くの人をこのホビーへと刺激し、自然をもっと身近に感じてもらいたいです。

 

AJ 世界水草レイアウトコンテストとはどのような存在ですか。


ある人たちにとっては、ただのアクアスケーピングコンテストかもしれません。でも私にとってIAPLCとは、このアクアスケーピングホビーの心であり魂でもあるのです。 IAPLCがあるからこそ、世界中のアクアスケーパーたちは毎年自分の限界に挑戦し続けられるのです。 IAPLCは私たちにとって、成しとげた激務を紹介できる舞台であり、IAPLCを通して世界中のアクアスケーパーたちとつながることができます。IAPLCはまるで家族のようであり、信仰であり、そして夢です。
印象的な流木を用いることで迫力と遠近感が表現されている。

水草でつながる 世界の仲間たち。


今年のネイチャーアクアリウムパーティーは、10月19日はANAクラウンプラザホテル新潟、20日はADA本社を会場に、2日間にわたって開催されました。初日の会場では世界水草レイアウトコンテスト2019(IAPLC)の上位作品の発表と表彰式が行われ、見事世界ランキング1位(グランプリ)に輝いたマレーシアのジョシュ・シム氏は受賞スピーチで「天野 尚先生は私たちに多くのものを残してくださいましたが、その中でも一番大切なものが夢であり、それが水草レイアウトを楽しむことです。私たちはこの夢の中に生きており、これからもその夢は続くのです。」と述べました。その言葉の通り、どの作品も情熱の結晶のようで素晴らしく、力強いエネルギーが感じられました。近年はSNSなどの影響もあり、コンテスト応募作品の表現や評価の是非を問うコメントが散見されるようになりましたが、作品の表現や評価は自由であるべきです。出品される方々には、何事にもとらわれることなく自由に創作し、水草レイアウトを心より楽しんでいただきたいと思います。そして、プロアマを問わず参加する世界のアクアスケーパー同士がお互いを認め、尊敬し合うことでこれからの水草レイアウトの表現やスタイル、楽しみ方が成熟していくのではないでしょうか。来年2020年、IAPLCは記念すべき20回記念大会となります。水草レイアウトを愛する皆様のご参加をお待ちしております。

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