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NATURE IN THE GLASS 「厳しさと寛容の森」Part1

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部

厳しさと優しさ 陰生水草とエキノドルスで 自然の両面を表現


[ 厳しさと寛容の森 ] 屋久島のような厳しい自然に生きる木々は、土壌だけでなく岩にも根を張ることで強固な基部をつくり、雨風などの環境変化に耐えている。また、樹木としての一生を終えた枯木や倒木には苔やシダなどの林床植物が着生し、新たな生命を育む苗床となる。そんな厳しい自然の中で力強く生きる植物の姿を水景として表現した。構図は岩に食い込んだ木の根をイメージして石と流木を配置し、そこにモスやシダ類などの陰生水草を活着させた。背景に植栽した各種のエキノドルスは、この水景に泳ぐエンゼルやカラシンと同郷の南米産であり、厳しさの中に寛容な優しさを与えている。

DATA


撮影日:2019年9月11日(ADA)
制作:内田 成(レイアウト制作・文)
水槽:キューブガーデン W120×D50×H50(cm)
照明:ソーラーRGB ×2(1日8時間30分点灯)
ろ過:スーパージェットフィルターES-1200(バイオリオL)
素材:ホーンウッド、万天石
底床:アクアソイル-アマゾニアⅡ、パワーサンド・アドバンスL、バクター100、 クリアスーパー、トルマリンBC
CO2:パレングラス・ビートル40Ø、ビートルカウンターで1秒に5滴(タワー使用)
AIR:リリィパイプP-6によるエアレーション 夜間消灯時15時間30分
添加剤:ブライティK、グリーンブライティ・ミネラル、グリーンブライティ・アイアン、 グリーンブライティ・ニトロ、フィトンギット(換水後)
換水:1週間に1度 1/3
水質:水温25℃ pH:6.4 TH:20mg/L

水草:BIOみずくさの森 アヌビアス・ナナ プチ / BIOみずくさの森 コブラグラス / ボルビティス・ヒュデロティ/ アヌビアス・グラブラ / エキノドルス・ルビンナローリーフ / エキノドルス・ウルグアイエンシス / エキノドルス・ジャングルスターナンバーワン / バリスネリア・スピラリス / アポノゲドン・ウルバケウス / ポタモゲドン・ガイー / ミクロソラム・クラビ / ウィローモス(モスバッグ)

魚種:シルバーチップ・テトラ(ハセマニア) / ハステータス・カラシン / スカラレ・エンゼル / サイアミーズ・フライングフォックス / オトシンクルス / ヤマトヌマエビ


自然のエッセンスを 取り入れて 水景に表現する


今回のレイアウトをつくるにあたって、今まで出会ってきた美しい風景のイメージを水景に取り入れたいと考えた。ただ、すべての要素を詰め込むと水景として窮屈な印象になってしまうため、自然のエッセンスだけに限定して表現することとし、全体のバランスを重視してレイアウトを制作した。今回、おもなモチーフとしたのは、昨年の夏に撮影に訪れた栃木のスッカン沢である。ネイチャーアクアリウムは自然から学ぶことが重要と言われるが、ただ自然を訪れるのではなく、撮影という目的を持って行くほうがレイアウトの参考になると思う。天野 尚の教えにもあるが、カメラで自然を切り取ることは、水槽に構図をつくる訓練にもなるのだ。
風景からのインスピレーション1
今回、構図のモチーフとしたのは、去年の夏、栃木のスッカン沢で出会った倒木である。長年の雨風により倒れたものと思われるが、寿命尽きてなお堂々としている姿に感銘を受け、レイアウトの題材にしようと考えた。
栃木県那須塩原市・スッカン沢 2018年6月上旬/撮影 内田 成
風景からのインスピレーション2
右側に配置した大きめの石は、樹木が力強く根付いた巨石をイメージして配置した。この石の部分に魚の隠れ家となる陰をつくりたいと考え、シダ類を配植している。
栃木県那須塩原市・スッカン沢 2018年6月上旬/撮影 内田 成
構図づくりのポイント
構図をつくる際には、まず自分のイメージに近い素材をざっくりと組み、主柱となる素材の空間に対するバランスを決めるのがポイント。長期維持を考え、素材の隙間は小石やソイルを流し込んで固定した。
背景の植栽
背景にはテープ状のエキノドルス・ウルグアイエンシスとバリスネリア・スピラリスを配植。バリスネリアのほうが生長が速いため、エキノドルスに影を落とさないようにやや控えめに植栽した。
ガレ場の表現
小さめの石を積んだガレ場にモスを巻き付けた小石を配置することで、時間とともに苔むした自然感が表現される。
シダ類配植のポイント
シダ類の配植は、全体のバランスを見ながら配置していくのがポイント。シダ類は単一で用いるよりもボルビティスとミクロソラムを織り交ぜることで緑の濃淡でリズムが生まれ、単調さが薄れる。
植栽直後のレイアウト
シダ類や苔類を多く使用したレイアウトは、時間経過によるこれらの生長とともに素材の印象が薄れてしまうことが多い。そのため、制作の段階で石や流木の地肌を見せる部分を明確につくっておくことが、完成水景にメリハリを与えることにつながる。
2019年2月15日 撮影
上から見た植栽直後の様子
シダ類を配置する際には、水槽を上から見て前景と背景に植栽した水草に葉が重ならないようにするのがポイント。こうすることで照明の光が水槽全体に行き届き、すべての水草が健康に生長できるようになる。
NATURE IN THE GLASS 「厳しさと寛容の森」Part2

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