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ADA SUIKEI CREATORS #01「本間 裕介」

本間 裕介本間裕介

SPECIAL FEATURE 「ADA 水景クリエイター」


2ヵ月間に渡って開催された「NATURE AQUARIUM EXHIBITION 2021 TOKYO」(以下NAE)。5人の水景クリエイターそれぞれが現在のベストを表現し、継承したネイチャーアクアリウムをさらに広めていくスタート地点となりました。 好評のうちに閉幕した今、彼らの心境や今後の目標について訊ねてみたいと思います。

観た人の心にすっと入ってくるような水景制作に挑戦し続けたい


今後も積極的に取り組みたい石組
「継承」が大きいテーマとなった本展示において、一番意識したポイントといえばやはり石組レイアウトになります。ネイチャーアクアリウムの中でもオリジナル性が高く、基本にして王道である三尊石組を、現時点での自分のベストとして制作しました。その反響はSNSなどで見ていたのですが、この石組レイアウトに好印象をもってもらえたコメントを多く見かけました。水草のレイアウト水槽としては、細かくつくり込んだ写実的な作風のほうが一般的に受け入れられやすいと思っていたのでこれらの反応については少し意外でした。しかしこれらの激励のおかげで、私が日々感じている石組レイアウトの可能性を再確認することができました。水景としてはとてもシンプルではありますが、そこに秘められた奥深さや自然への憧れやロマンは多くの人に伝わると信じています。石組にまつわる考え方、哲学などを基本に忠実に守りながら、観た人の心にすっと入ってくるような水景制作に挑戦し続けたいと思います。
シンプルな構図にも関わらず、印象深く記憶に残る石組レイアウトをつくりたい。
思い描く新たな展示イメージ
今後の目標としては、長く展示されるネイチャーアクアリウムをつくることを掲げています。これには長期維持される水槽という観点だけでなく、長く愛され多くの人の目の触れる場所に作品として残したいという希望も含まれています。大胆に言わせてもらえば何十年という長い期間に展示される水槽で、できることならば10mを超えるような大型の水景をつくってみたいと思っています。観た人が水中世界に引き込まれ、心を奪われるようなシンプルな石組レイアウトで、命をもった生き物でありながら芸術的な側面を感じられる、そんなイメージを膨らませています。
かなり大それた未来を思い描いていますので、今すぐ実際につくれるのかといわれると難しいことのほうが多いと思います。しかし、多くの人に水草の美しさを知ってもらい、かつネイチャーアクアリウムのファンになってもらうために自分が取り組むべきテーマであるという熱意をもっています。
水草を身近に感じてもらうための活動
私は他のクリエイターと比べて歳が一回り近く離れていて、年齢的にも今の子供たちの目線が気になります。さまざまな情報が飛び交う世の中ですが、生き物の美しさに目を向けたり、自然の生態系や地球全体の環境について考えたりする機会を少しでも多くもって欲しいと思っています。以前にドイツを訪れたときに、アクアリウムの展示会に小学生が授業の一環として見学に来ていました。話している詳細まではわかりませんでしたが、ホビーとしてのアクアリウムの魅力だけではなく、それに携わる人が世界中にいることも理解しているんだなと感じ取れたことがありました。人々を夢中にする趣味があり、夢中になった人がそれを生業としてさらに魅力を広げようと活動していることを、とにかく多くの人に知ってもらいたいと思います。またここ数年ですが、地域の小学生や園児にネイチャーアクアリウムについて紹介する機会が増えてきました。NAギャラリーの水槽や、ADA本社を囲む森についてわかりやすいように説明しています。幼少期に見て感動したものについては、大人になってもそれが原動力になると思っているので、説明もしっかりと丁寧に伝わるようにと心がけています。このような課外活動を通して水草や魚をもっと身近に感じてもらい、自然の大切さを実感して次世代の興味関心や情熱が生まれてきてくれればとてもうれしく思います。
地域の小学生にネイチャーアクアリウムについて説明する。純粋な興味関心にこちらが刺激されることもある。
「風薫る水辺」
この水景では、細く美しい線の流木をダイナミックに使い、テープ状の水草の群落を点在させることで清々しさを表現している。流木の造形美が消えてしまわないように、テープ状の水草は線の細いソーシャルフェザーダスターを選択した。また、タデ科の水草を合わせて使うことで、和の趣を加えている。清々しい水草の群落の間を魚たちが気持ち良さげに泳ぐ様子は、日本の初夏の水辺を連想させる。
DATA
水槽:キューブガーデン W180×D60×H60(cm)

水草:
ソーシャルフェザーダスター
ホソバノウナギツカミ
ポリゴナムsp. “ピンク”
エレオカリス・ビビパラ
ジャイアントサジタリア

魚種:
メラノタエニア・サフレンシス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ
[初夏の石景]
天野 尚の真骨頂でもあった石組レイアウトの世界は奥が深く、特に川石は形がシンプルなだけに配石が難しい。配石は水の流れを意識することが大切だが、考え過ぎると作為的な配石になりやすく、石に勢いがなくなってしまう。「一気呵成に石を組むことにより、自然の流れや勢いが石に転ずる」というのが、天野の教えでもあった。石と語り、寄り添い、石が持つパワーを感じながら、何とか納得のいく作品に仕上がった。
DATA
水槽:キューブガーデン W180×D60×H60(cm)

水草:
グロッソスティグマ
エキノドルス・テネルス
ヘアーグラス
エレオカリス・ビビパラ

魚種:
バリリウス・バケリ
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

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