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NATURE IN THE GLASS 「雨季の細流」

内田 成内田 成

降水量によって移り変わる川辺の生態系をイメージ


[ 雨季の細流 ] 水位変動が大きい地域に適応して育つアヌビアス。先述のパルダリウムで表現した時間経過やたくましさを、この水景では水面下にフィールドを移して描写している。構図は典型的な凸型とし、限られた空間でより多くの植物を用いるために水槽に対してやや大きめの雲山石を使用した。これら2つのレイアウトは、水中と水上を逆に設定したとしても成り立つように構図や配植を考えて制作を進めた。
ⒸAQUA DESIGN AMANO

DATA


撮影日 : 2021年2月17日(ADA)
制作 : 内田 成(レイアウト制作・文)
水槽 : キューブガーデン W60×D30×H36(cm)
照明 : アクアスカイRGB×1基 1日9時間点灯
ろ過 : スーパージェットフィルターES-600(バイオリオG)
素材 : 雲山石、ブランチウッド
底床 : トロピカルリバーサンド、アクアソイル-アマゾニア Ver.2、パワーサンド・アドバンスS、バクター100、クリアスーパー、トルマリンBC
CO2 : パレングラスTYPE-3、CO2グラスカウンターで1秒に2滴(タワー使用)
AIR : リリィパイプP-2によるエアレーション 夜間消灯時15時間
添加剤 : グリーンブライティ・ニュートラルK、グリーンブライティ・ミネラル
換水 : 1週間に1度 1/3
水質 : 水温25℃ pH:6.4 TH:50mg/L

水草 :
アヌビアス・ナナ プチ
アヌビアス・ナナ ゴールデン
アヌビアス・グラブラ
ボルビティス・ヒュディロッティ
リシア
ウィローモス
ウォーターローン
ルドウィジア・グランデュローサ
ルドウィジア・セネガレンシス
オレンジ・ミリオフィラム
エキノドルス・アングスチフォリア
エレオカリス・ビビパラ

魚種 :
アンゴラ・バルブ
アフリカン・ランプアイ
サイアミーズ・フライングフォックス
オトシンクルス
ヤマトヌマエビ

水に沈んだ世界を素材や水草の特性を生かして鮮やかに表現

意識した構図のイメージ
60cm水槽に対してやや大きめな雲山石を使用し、直立する立岩のようなイメージで構図を組んだ。そこを一つの岸壁的景観とし、力強く根を下ろし自生するアヌビアスの自生域を再現した。構図は典型的な凸型にしており、中央からテープ状と有茎草が垣間見える様子は石をあしらった生け花のようにも見える。

 
ボルビティスとアヌビアスの配置工夫
アヌビアスに対して同郷であるボルビティス・ヒュディロッティを使用。ともに陰生水草であるが、ボルビティスのほうが光を必要とするため意図的に水槽上方に配植。ボルビティスの葉によって下部の光を適度に遮り、アヌビアスが好む光量に上手く調整している。高光量で発生しやすいスポット状の藻類も付きにくくなる。

 
BIOみずくさの森 アヌビアス・ナナ プチ
群生美
アヌビアスは群落を意識して数をまとめて配植することで本来の自然景観を演出することができる。またウィローモスで根元を隠すことで、水景により溶け込み、時間の経過を感じられるようになる。

 
ブランチウッドと雲山石
雲山石特有のポケットに小型のブランチウッドをはめ込み固定することで、構図的安定を図った。

 
エキノドルス・アングスチフォリアとエリオカリス・ピビパラ
水の揺らぎを視覚的に感じることのできる代表的なテープ状の水草である。雲山石の強い主張を上手く和らげる役割を持っている。
自生地にマッチした魚種選択
アフリカ原産のアンゴラ・バルブを泳がせた。同郷の水草と魚の組み合わせは自然な調和を感じることができが、ここでは飼い込みが足りなかった。



 

表現力とメンテナンス力を引き出すADAプロダクト


アヌビアスなどをふんだんに配植した水景では、水槽内に緩やかな生長リズムが生じる。そのため繁茂するまでの時間を計算した植栽や管理が求められるが、その一連の作業に役立つのが専門性の高いレイアウトツールたちである。水草たちのリズムに寄り添い作業しよう。

アヌビアス・ナナ プチ

流線型の有用性
陰生水草で活着性のあるアヌビアスは、その性質を生かして流木や石などに活着させて多用すると、水景の中に迫力と時間の流れを感じさせる独特の雰囲気もたらす。 そんなアヌビアスだが、主な管理は古葉の摘み取りとなるため、カット作業ではプロシザース・ウェーブが重宝した。 特徴的なその長く伸びた流線型の形状は、石や流木などの狭い隙間でも無理なく古葉のカットを行うことができる。 また、アヌビアスの活着場所によってはプロシザーズを裏返して持ち、刃先の角度を変えながらカット作業を行なった。 カーブした形により刃がちょうど葉柄の根元にしっかりと届きカットすることができる。 こうした的確なカットが、アヌビアスの株そのものを良好な状態で維持することにもつながった。
プロシザース・ウェーブを裏返して持つと、この場合狭い箇所でも刃先の狙いを定めやすく、難なく古葉の摘み取りができる。
プロシザース・ウェーブ
見た目さながら、一番の特徴はその流線型である。デザイン性も機能性も高い至極の一本。

ボルビティス・ヒュデロッティ

プロシザース Mを使用すれば、雲山石のポケット状の穴の中でも十分に葉柄の根元まで刃が届き、的確なカットが可能。
最適なツールの選択
ボルビティスの特徴でもある透明感ある葉を美しく展開させるには、タイミングよく古葉をカットして新葉の展開を常に促すことが大切である。 雲山石の窪みに活着したボルビティスの古葉カットには、柄の⻑いプロシザース Mが最適だった。 全長305mmの細長いボディ形状により、雲⼭⽯の窪みの中まで刃先を容易に挿入でき、 60cm⽔槽なら正⾯から確認しながらカット作業が行える。 そのため切り残しがなく、正確な作業が的確に行うことができた。 同じプロシザースでも⽔槽サイズと構図のバランスを考慮しながら、適切なサイズを選択することで、より円滑にメンテナンス作業を進められるようになる。 切れ味の鋭いプロシザースで作業に没頭しよう。
プロシザース M
長いボディは刃先の細かな調節がしやすく、シダ類の古葉カットが行いやすい。

 
水景の印象を左右する前景
水槽前面の底床ラインは、水景の印象に大きな影響を与える。 今回紹介した水景では、雲山石の手前に化粧砂を敷いているが、これは前景の空間を確保しながらも、明るい印象を与えメリハリを付けるためだ。 その化粧砂のラインはできるだけ平らに整え、面としての印象を強め、水景に広がりを感じさせるようにしている。 使用した雲山石がやや大きく狭小空間での砂をならす作業であったが、ここではサンドフラッターが非常に重宝した。化粧砂の量が少ないこともあり、汚れが気になってきたら飼育水ごとホースで吸い出して洗浄を行った。 洗浄した化粧砂を再び敷き直す際には、狭い場所だったためサンドフラッターの細い方で作業を行うと砂を寄せやすく、楽にならすことができた。
サンドフラッター
大小の先端部を使い分けることで、広い部分から込み入った狭い部分まで、底床をきれいにならすことができる。
シルエットを浮き出させる
ライトスクリーンは、撮影時の水景演出や観賞性の向上を目的とした製品であるが、普段のメンテナンスでも背景からの発光が役に立つことがある。 その透過光によって、水草の姿があらわになり、藻類の付き方や古葉の有無を細かく確認することができるようになる。 正面から見たときに、より陰影がはっきりするためで、構図と水草のバランスなども確認しやすくなる。先に紹介した水景で例にあげると、エレオカリス・ビビパラの場合は点灯させると、草体の先端に付く細かな胎生芽の付け根が光に照らされて浮かび上がり、摘み取り作業が非常に行いやすくなる。 また、密度や高さなども確認しやすいため、以降のメンテナンス予定を組み立てやすく長期維持にもつながった。 またエキノドルス・アングスチフォリアの場合は、透明感のある草体も相まって、葉の状態を一目で確認できるため、古葉を見落とすことなく処理ができるようになり作業も楽に行えるようになった。
ライトスクリーン 60
LEDライトによって背面から発光させることで、簡単に白い背景をつくることができる。 美しい水景演出には欠かせない。



 

ネイチャーアクアリウムとパルダリウムでアヌビアスを楽しむ3つの要点


ネイチャーアクアリウムとパルダリウム、表現する世界は変わっても、自然から学ぶというプロセスは同じだ。 2つの景観を通して感じられること、考えられることを、「構図」、「水草」、「動き」の3点から比較してみよう。

構図-ネイチャーアクアリウム-

ダイナミックに組まれた雲山石が、切り立った崖を彷彿とさせる。
水流を意識する
河川の水中イメージなどからインスピレーションを受けることも多いネイチャーアクアリウムだが、水の流れを意識して構図を組むことは大切である。 特に大きな石などを使用する場合には、水の流れに影響を与えるので注意したい。 また管理面のことを考慮して、流木や石は動かないように、しっかりと固定することで長期維持がしやすくなる。

構図-パルダリウム-

大胆に配置された流木や石が、自然の力強さを感じさせる。
縦方向を意識する
パルダリウムは鬱蒼とした熱帯ジャングルをイメージすることが多いが、縦方向の階層構造を意識するとよい。 そのためシステムパルダの水槽は高さが45cmとやや高くなっている。 ここでは流木を立てるように組み、石などで根元を固めるような構成を取った。 アヌビアスを固定しやすい流木の窪みや形状も考慮して、安定した構図骨格を決めることも大切だ。

 

水草-ネイチャーアクアリウム-

水質が安定すれば、美しい葉の展開が楽しめる。
たくましい水中葉の美しさ
一般的な水草のイメージは、ゆらゆらと水中を揺れる柔らかな印象だろうが、アヌビアスの水中葉は水上葉とほとんど変化がなく硬質な葉をゆっくりと展開させる。そのため長期維持がしやすいが、生長が遅いぶんだけ藻類が付着しやすいのが難点。 水質管理には注意し、配置を決めたらできるだけ株が動かないようにしっかりと固定すると根が活着しやすい。

水草-パルダリウム-

パルダライト60が照らす、艶やかな印象の美しい葉面。
濡れて輝く水上葉の美しさ
アヌビアスの葉が硬いのは、おそらく紫外線や乾燥といった厳しい自生地環境を生き抜くための進化だったのだろう。そうしたアヌビアスの葉の魅力を感じるためには、パルダリウムのほうが適しているかもしれない。 霧で濡れ、パルダライト60の光を受けて青く輝いたアヌビアスの葉面の美しさは、アクアリウムでは楽しめない魅力を秘めている。

 

動き-ネイチャーアクアリウム-

主役の魚は水景の眺めに動きを与える役割もある。
ビオトープ的な魚種選択
ネイチャーアクアリウムの主役は魚であり、水景に動きを与えてくれるだけではなく、生命の輝きがより感じられるようになる。 アヌビアスをメインにした水景であれば、同じ故郷であるアフリカ産の魚種を選択するとアフリカ河川の環境をイメージした雰囲気が楽しめる。 普段目にすることができない水中シーンが、自然生態系の尊さをありありと感じさせてくれる。

動き-パルダリウム-

ゆっくりと漂うミストが動きを与え、霧で煙るような雰囲気を醸し出す。
霧によるジャングルリズム
パルダリウムでは、ミストフローによって漂う霧の流れが動的な視覚効果を与える。 それは植物たちを充分に潤すだけでなく、時間の経過とともに景観を趣あるものに変えていくことにつながっていく。 熱帯植物での構成が主となるパルダリウムは、視覚的な動きが少ない分、我々の心象風景に多くのことを語りかけてくるように思える。

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