水中の森
Forests Underwater
— 永遠に刻まれる10年 —
「世界最大のネイチャーアクアリウム、
その一つの循環が完結する。」
閉幕のお知らせ
リスボン海洋水族館(Oceanário de Lisboa)に展示されている 天野尚「水中の森 Forests Underwater」は、2026年6月をもって正式に閉幕することとなりました。 本展示は、同館の公式決定に基づき、10年にわたる展示のサイクルを完結します。
リスボン海洋水族館からのメッセージ
「水中の森 Forests Underwater」は、単なる展示を超え、ひとつの生きた時間として存在してきました。その歩みの節目にあたり、リスボン海洋水族館から、閉幕に寄せたメッセージが届けられました。
天野尚「水中の森 Forests Underwater」の閉幕
永遠に刻まれる10年
「自然に目を向ければ、私たちの世界をより深く理解し、そしてそれを守る術を学ぶことができる。」 この理念から、天野尚は自身最後の傑作となる「水中の森」―世界最大のネイチャーアクアリウム―を創り上げました。
この10年間、「水中の森」は単なる展示を超えた存在でした。芸術と自然、そして科学が融合し、あらゆる生命のバランスから生まれる美しさを明らかにする、完全な調和と一体感に満ちた唯一無二の体験でした。 それは生きた生態系として、リスボン海洋水族館(Oceanário de Lisboa)の歩みに深く刻まれ、何百万人もの人々が「自然と調和して生きること」の重要性を、理想論ではなく生命に不可欠な条件として認識するきっかけとなりました。
この生きた作品は、多くの人々に感動と気づきを与え、アクアリウム、芸術、そして自然保護の関係性において、リスボン海洋水族館の歴史に残る確かな節目となりました。 真の豊かさと美は調和と均衡から生まれる天野のこのビジョンに根ざした「推移中の森」は、私たちを静かな思索へと誘い、変化し続ける地球の中で人間が果たすべき役割について考える時間を与えてくれました。
世界最大のネイチャーアクアリウムを擁することは、大きな名誉であると同時に重大な責任でもありました。その責任を、私たちは献身と敬意、そして深い誇りをもって担ってきました。 「水中の森」の幕を閉じることは、この特別なサイクルが自然に完結することを意味します。自然そのものと同じように、ひとつの循環は終わりを迎え、新たな再生や変化、そして次なるインスピレーションへの道が開かれます。 これは別れではなく、この10年の間に体験し、学び、分かち合ったすべてを称える祝福の瞬間です。
「水中の森」の遺産は、私たちの記憶の中に、社会に与えた影響の中に、そして進化し続ける組織としての私たちを導くインスピレーションとして、これからも生き続けます。
この物語の一部となってくださったすべての皆さまに、心より感謝いたします。
天野尚が遺した言葉
40億年の歴史をもつこの地球において、人類は新参者にすぎません。しかし今、その人類は自然を破壊する力を手にしています。 かつて澄みきっていた水は濁り、緑に覆われていた大地は色を失いつつあります。生活を豊かにしようとするあまり、人は自然を破壊し、その結果、私たちすべてを計り知れないほど貧しくしてしまいました。 荒廃した環境から生まれるのは、荒んだ心だけです。私たちは、自然の中で生きるか、さもなくば生きられないということを忘れてはなりません。
美しいネイチャーアクアリウムを創り、維持することを通して、人は生命同士の精緻なつながり――水草、魚、微生物、そして人間――をあらためて学び直します。 真の豊かさと美しさは、調和と均衡から生まれます。 アクアリウムは、その真理を教えてくれる偉大な教師なのです。
1992年1月6日
天野 尚レイアウト作品集『ガラスの中の大自然』より
水中の森 ― 生き続けたネイチャーアクアリウム
「水中の森」は、世界最大規模のネイチャーアクアリウムとして、2015年に誕生しました。 水草、魚類、微生物が織りなす生態系は、単なる展示ではなく、実際に呼吸し、成長し続ける“生きた森”として維持されてきました。
[プロジェクトの歩み]
制作プロジェクトスタート
現地レイアウト制作
オープニングセレモニー
リスボン海洋水族館 特別展示室「水中の森」オープン
[展示概要]
全長:40m
奥行き:2.5m
水深:1.5m
総水量:160トン
こうして誕生した「水中の森」は、10年にわたり、リスボンの地で生き続けました。
それは展示であると同時に、変化し続ける生態系の記録でもありました。
水中の森が生まれた日へ
制作の背景、設計思想、立ち上げの記録は、こちらの特設ページでご覧いただけます。
エピローグ ― 受け継がれるもの
「水中の森」は、10年という時間の中で、私たちに自然と共に生きるということの意味を問い続けてきました。
その問いは、展示の幕が下りたあとも消えることはありません。
この作品が遺した思想と記憶は、これからも人々の中に、そしてADAのものづくりの中に生き続けます。
