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石組「考」 内田 成 × 井上大輔

石組「考」 内田 成 × 井上大輔

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部

風景から得る感動とアイデアが新たなオリジナリティを生む


水景クリエイター 内田成に井上大輔が石組のテーマ性と自然との結び付きを問いた
「結び岩」 サイズ : W120×D50×H50(cm)
井上 中央の2つの大きな石が印象的な配石ですが、この作品のテーマはなんですか。
内田 この作品は日本各地の海岸線に見られる夫婦岩をモチーフにした石組レイアウトです。あえてシンメトリーな構図にすることで、神聖・崇高といったイメージを狙いました。夫婦岩が独立する岩礁地帯を表現するために、素材にごつごつした風合いの龍王石を使用していますが、その一方で、植栽では繊細な水草と赤の匍匐する水草を用いて高山地帯の紅葉を表現しています。一見、相反する海と山の景観を融合させた新しい試みでもありました。

井上 では、内田さんの石組レイアウトのスタイルを教えてください。
内田 今は、自然から得た感動やインスピレーションをもとにすべてつくっています。それこそネイチャーアクアリウムのコンセプトである「自然から学び、自然を創る。」ですね。ただ、切り取った自然をそのまま模倣するだけだと、オリジナリティに欠けてしまいます。作品って人間の感覚でつくって人間の感覚で評価するものなので、景観やアイデアを融合させてイマジネーションを広げていくことは、すごく大切な要素だと思います。今回の作品で言うと、石組の構図に夫婦岩のモチーフを取り入れた「景観」と「アイデア」の融合。海岸線を表現した構図に、植栽に高山地帯のジオラマ的な要素を加えた「景観」と「景観」の融合。私はこうした2つのテーマを軸にすることが大切だと思っています。さらに、NAギャラリーでのレイアウト制作では、視覚的なかっこよさだけでなく、ストーリー性や想いをのせながらつくることを大事にしています。これはレイアウト全般に当てはまることですね。

井上 なるほど、三尊石組とはまた別のスタイルなんですね。
内田 三尊石組に代表される作品の数々から学んだ基礎があって、そこから自分のオリジナル表現として、自然や風景写真の中にあるエッセンスから構図を描いて、石を組んでいくイメージですね。また私の場合、配石や空間の使い方は自然観察に限らず、日本庭園に見られる石組、水墨画や図屏風などの資料も参考にしています。
水景制作には風景からのインスピレーションが欠かせない。
新潟県・笹川流れ 撮影 内田成
岩手県・八幡平 撮影 内田成
井上 最後に石組レイアウトの魅力を教えてください
内田 この石組のモチーフは夫婦岩ですが、他の自然信仰の例でいうと、たとえば月があると思います。日本だと、月の模様をうさぎが餅つきしているように捉えていますが、他の国ではカニだったり女性の横顔だったりするそうです。これは磐座信仰のように、古くから人間が自然物をなにかに見立てて自然との関わりを意識的に深めていることに帰結していると思っているのですが、石組には視覚的なパワー以上に、私たちが潜在的な部分で自然との結び付き、共存を求めているのかもしれません。そして月のように、見る人によって違う表情を見せてくれるのだと思います。話は変わりますが、昨今のコンテスト作品でよく見られる特徴の一つに、迫力を出すためかいかに空間を埋めるかを重要視している傾向があリますよね? それに対して、石組レイアウトは開けた空間、つまり余白だと思うんです。そこに私たち日本人の持つ、「佗び・寂び」の精神性が宿っていると私は考えています。

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