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ネイチャーアクアリウムにおける栄養素添加の考え方

ネイチャーアクアリウムにおける栄養素添加の考え方

aquajournaljpWEBアクア・ジャーナル編集部
ネイチャーアクアリウムでは、水草を健康に育てることで美しい水景をつくり上げます。そこで効果的なのが液体栄養素や各種添加液ですが、ただ闇雲に水槽に添加しただけでは水草は健康に育ちません。水草を健康に育てるには、底床やフィルター、照明、CO2添加などの水槽システムを適切に使用した上で、水槽に適切な種類と量の液体栄養素を添加する必要があるのです。ネイチャーアクアリウムにおける栄養素添加の基本的な考え方は、「不足している栄養素を添加することで過剰な栄養素を水草に吸収させる」というものです。水草を植栽する底床にはパワーサンド・シリーズやアクアソイル・シリーズを使用しますが、これらには窒素(N)やリン(P)などの基礎的な栄養素が含まれています。また、水槽で飼育する魚やエビのエサと排せつ物からも窒素とリンが供給されるため、水槽内では窒素とリンが過剰になることが多く、これが藻類の増殖する一因となっているのです。特にリンは、わずかな量でも藻類を増殖させる恐れがあるため、水槽にアクアコンディショナーのクリアウォーターを添加するなどして水中のリンを極力取り除くことが藻類を増加させないポイントになります。そのため、現行のADA液体栄養素には、リンは含まれていません(水草の生長に必要なリンは底床から供給しています)。水槽内で過剰になりやすい窒素やリンとは対照的に、水槽内で不足しやすい栄養素としてはカリウム(K)や硫黄(S)、鉄(Fe)などのほかに、マグネシウム(Mg)やホウ素(B)などの微量元素があります。ネイチャーアクアリウムでは、これらの不足しやすい栄養素を積極的に水槽に添加することで水草の栄養素吸収を促進し、水槽内で過剰になりやすい窒素やリンを水草に速やかに吸収させているのです。なお、現行のADA液体栄養素は含まれる成分によって種類が別れているため、水槽の状況に応じて適切な種類を組み合わせて添加することが基本となっています。
ブライティK/グリーンブライティ・ニュートラルK
ネイチャーアクアリウムにおいて、水中に添加する栄養素としてまず最初に注目されたのがカリウム(K)です。カリウムは窒素(N)やリン(P)と並び植物が多く必要とする栄養素ですが、魚のエサや排せつ物から多量に供給される窒素やリンと違って水槽内では有効な供給源がないため、水草の生長を制限する一因となっていたのです。ブライティKは、カリウムを多量に含む草木灰をヒントに開発された液体栄養素で、水槽に添加することで水草の葉の表面からカリウムが速やかに吸収されます。水草に吸収されたカリウムは、細胞の中でさまざまな酵素の反応を助ける補酵素として働くため、カリウムが不足すると水草は健康に生長することができなくなるのです。なお、草木灰の水溶液を原点とするブライティKは、強いアルカリ性の液体となっています。そのため、水槽に添加すると一時的にpHが上昇し、水草の種類によってはうまく育たないことがありました。特に、トニナsp.に代表される酸性の水質を好む南米産の有茎草などでは、その影響が顕著に見られます。この点を改良し、pHを上昇させない中性の液体栄養素として開発されたのがグリーンブライティ・ニュートラルKです。カリウムを補給する効果はどちらも同様であり、パールグラスの仲間のように中性から弱アルカリ性の水質を好む水草もあることから、現在のネイチャーアクアリウムでは育成する水草の種類に応じてブライティKとグリーンブライティ・ニュートラルKを使い分けています。

ブライティK 製品情報
グリーンブライティ・ニュートラルK 製品情報
グリーンブライティ・ミネラル
陸上植物は栄養素を根から水と一緒に吸収していますが、水中に生育する水草は根だけでなく葉や茎の表面からも栄養素を吸収することができます。これが水草の生態的な大きな特徴であり、水槽への液体栄養素の添加が有効な根拠ともなっています。植物全般に共通する主要な栄養素として窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)がありますが、これ以外にも量は少ないものの植物の生長に欠かせない栄養素として各種の微量元素があります。ネイチャーアクアリウムでは、微量元素は底床のパワーサンドやアクアソイルから溶け出したり、換水によって水道水に含まれるカルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)などのミネラルが補給されますが、それだけでは微量元素の種類や量に偏りがあり、水草が健康に生長できない場合があります。水草に吸収された微量元素は、細胞内でアミノ酸やタンパク質を合成する働き、各種の酵素を活性化させる働き、細胞壁など水草の構造自体をつくる働きなどに必須です。そのため、不足すると生長不良、葉の白化や黄変、新芽や葉の形成異常などが見られます。グリーンブライティ・ミネラルは、特に水槽内で不足しやすい硫黄(S)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、Zn(亜鉛)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)といった微量元素を補給する液体栄養素です。底床や照明、CO2添加などの条件が整った水槽に毎日適量を添加することで、水草の葉色が良くなり、健康に生長できるようになります。

グリーンブライティ・ミネラル 製品情報
グリーンブライティ・アイアン
水草の健康な生長に必須の微量元素の中でも、鉄(Fe)は特に重要です。水に溶けた鉄は、二価鉄(Fe2+)または三価鉄(Fe3+)の状態で存在しますが、植物が吸収して利用できるのは二価鉄だけです。そのため、イネ科植物を除く多くの植物は、根で三価鉄を二価鉄に変換してから吸収しています。水中の栄養素を葉面から直接吸収できる水草の場合、二価鉄の状態で供給することでこの過程が省けるため吸収が早くなります。しかし、水槽内では二価鉄はすぐに三価鉄や水酸化鉄となり、水草が葉面から直接吸収することができなくなります。グリーンブライティ・アイアンでは、水草に二価鉄を安定して供給するために、キレート鉄と酸を組み合わせて吸収効率を高めています。キレート鉄は二価鉄が他の物質と結合するのを防ぐ処理(キレート化)を施した鉄で、これが水草の葉面に接することで速やかに二価鉄が吸収されます。このキレート鉄は酸性の水質で安定して働くため、酸とともに水槽に添加することで、より水草が利用しやすくなるのです。水草に吸収された鉄は、光合成に不可欠な葉緑素(クロロフィル)の合成や葉緑体中の電子伝達系で利用されるため、不足すると葉の色が薄くなったり、光合成が十分に行えなくなります。また、鉄は葉緑体中で硫黄(S)と一緒に利用されるため、グリーンブライティ・アイアンには硫黄も含まれており、鉄と同時に供給することができるのです。なお、鉄と硫黄はグリーンブライティ・ミネラルにも含まれていますが、水草が生長するにしたがって要求量も多くなるため、植栽から1〜2カ月ほど経過して水草が繁茂してきたら、グリーンブライティ・アイアンを組み合わせて添加してください。(※グリーンブライティ・アイアンには、鉄と硫黄以外の微量元素は含まれていません。)

グリーンブライティ・アイアン 製品情報
グリーンブライティ・ニトロ
水草の吸収する栄養素の中でも、窒素(N)は要求量が最も多く、葉や茎の健康な生長に必要なだけでなく、光合成を活発にする働きがあるため、重要な栄養素と言えます。ただし、ネイチャーアクアリウムでは、底床に使用するパワーサンド・シリーズやアクアソイル・シリーズに窒素が多量に含まれており、魚やエビのエサと排せつ物からも常に供給されているため、特に不足していない場合が多くあります。窒素はグリーンブライティ・ニトロで補給することができますが、水草の吸収量を上回る量の窒素を水槽内に添加するとアオミドロなどの藻類が増殖しやすくなるため、添加には特に注意が必要な栄養素と言えます。グリーンブライティ・ニトロを添加したほうが良い状況としては、水槽をセットしてから数カ月経過し、底床から供給される窒素が減少して水草の生長速度が遅くなった場合や、水槽で飼育している魚やエビの量が極端に少なく、それが原因で水草の生長が悪い場合などがあります。水草が葉面から吸収できる窒素の形態としては、尿素(CH4N2O)、アンモニウム(NH4+)、硝酸イオン(NO3-)などがあり、特に尿素は植物の葉面から吸収されやすいため、グリーンブライティ・ニトロの主成分にもなっています。また、水草にすぐに吸収されなかった尿素は、ろ過槽のろ材に付着したバクテリアなどの働きで速やかにアンモニウムや硝酸イオンに変化し、これらの形態でも水草に吸収されます。なお、グリーンブライティ・ニトロは有茎草やテープ状の水草など葉面からの栄養素吸収が盛んな水草への窒素の補給に適していますが、グロッソスティグマやクリプトコリネの仲間など根からの栄養素吸収が盛んな水草への窒素の補給には、底床に差し込むスティックタイプの固形栄養素であるボトムプラスを使用するのが効果的です。

グリーンブライティ・ニトロ 製品情報
ECA・プラス/グリーンゲイン・プラス
ネイチャーアクアリウムでは、日常的に添加する液体栄養素のグリーンブライティ・シリーズの他に、水草や水槽の状態に応じて使用する添加液があります。ECA・プラスは、水中の二価鉄(Fe2+)と硫黄(S)の濃度を急速に高めることで水草の白化を改善する添加液です。基本的にグリーンブライティ・アイアンの高濃度版という位置付けですが、有機酸が強化されているため、二価鉄がより水草に吸収されやすくなっています。また、葉緑素の主要な構成要素であるマグネシウム(Mg)も強化されているため、水草の白化を効果的に改善することができます。ただし、ECA・プラスは鉄の濃度が非常に高いため、長期間継続して使用すると吸収されずに水中に残留した鉄が水酸化鉄となり、バイオリオの表面やパレングラスの拡散面に褐色の汚れとして付着します。これを避けるため、ECA・プラスを添加して水草の白化が改善したら、常用に適した濃度のグリーンブライティ・アイアンに切り替えるようにしてください(グリーンブライティ・ミネラルも併用)。グリーンゲイン・プラスは、海藻由来のサイトカイニン(植物ホルモンの一種)やベタイン(アミノ酸の一種)を含む添加液で、新芽の形成を促したり、栄養素の吸収を促す効果があります。そのため、トリミング直後の有茎草など、強いストレスを受けた水草の状態改善を目的に水槽に添加します。また、新芽の形成時に不可欠な微量元素であるホウ素(B)が強化されているため、トリミング後の有茎草をより早く繁茂させることができます。グリーンゲイン・プラスには海藻由来の有機物が多く含まれるため、長期間継続して使用すると水を汚す原因にもなります。新芽がある程度形成されたら、通常の栄養素だけを添加するようにしてください。

ECA・プラス 製品情報
グリーンゲイン・プラス 製品情報

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