ADA

ADA水景クリエイター#05 「越智 隼人」

越智 隼人越智 隼人

向上心を持ち続けプロとして人の心に残る仕事を目指す


人生のターニングポイント
2015年1月末に行なわれたリスボン海洋水族館での「水中の森」制作に携わったことは、私の水景クリエイター人生の中での大きなターニングポイントとなりました。このころの私は、入社間もなくADAで初めてチームで行う仕事であったため、期待感と不安が入り混じった状態で現地入りしたことを今でもよく覚えています。制作が始まると不安を感じている暇がないほど怒涛の勢いで構図が組まれていき、迷うことなく的確になおかつ瞬間的に流木の配置を次々と指示していく天野の姿はまるで何かが降りてきたようでした。水槽内に組まれた流木たちは、あたかも自然がつくり出したようで、これがネイチャーアクアリムの概念にある「自然を創る」ということなのだと肌で感じた瞬間でした。「川を再現する」と銘打ってつくられたこの水景は、水槽内に散りばめられたストーリーを読み取りながら歩き見ることができるネイチャーアクアリウムの完成形の一つであり、私の中のネイチャーアクアリウムを鑑みるうえで欠かすことのできない存在となっています。今でも何かの節目や行き詰ったときにオリジナルのテーマ曲を聴きながら思い返すこともあるほどです。この経験をもとに同年11月には、アトレ浦和に180㎝水槽を4本制作し、さらにすみだ水族館に展示されている自然水景の管理スタッフとなり、今はすみだ水族館の管理責任者として日々大型水槽を相手に業務を遂行しています。
思い出のリスボン
「水中の森」の制作現場では緊張感もあったが、天野から仕事の流儀を教わった。それが今の仕事にも生かされている。

 
水景管理の難しさ
いかに水草を健康的できれいな状態に育てるか。それはネイチャーアクアリウムの基礎的な部分でもあり、長期に渡り維持管理していく上で一番難しい問題だと思っています。なぜなら照明時間、水質、CO2の添加量、栄養素のバランス、土壌の状態などいろいろな要因が絡み合い、またそのバランスは日々刻々と変化しながら水草は生長しているからです。そのバランスを見ながら理論的な管理と経験からなる感覚を合わせてメンテナンスを行うことが必要なのです。結果として良い状態に育て上げることができたときに至福の喜びを感じます。条件が難しければ難しいほど解決したときに得られる達成感は大きいものとなります。すみだ水族館では、通常サイズの水槽条件の他にさまざまな条件がさらに加わります。水深があることによる管理作業の難しさもその一つであり、葉を一枚切るだけの作業でも超大型水槽ではかなり困難な作業になるのです。中でも一番苦労しているのが7m水槽のグロッソスティグマの育成です。すみだ水族館の管理責任者になった際、私にとってグロッソスティグマの状態が満足のいくものではありませんでした。そこでカチオンフィルターによる水質調整や添加剤の量の調整、トリミングのタイミングや頻度、さまざまなことを試し、現在ではより健康的な状態で維持できるようにはなっています(ぜひ、見に来てください!)。しかし、これで満足しているわけではなく「より良く、より美しく」をモットーに日々精進することを心掛けています。単純なことですが、これが大切だと思っています。
すみだ水族館での日常
エントランスに設置された巨大水槽の管理は毎日夜間に行われる。日々の地道な作業が水景の美しさを支えている。

 
管理業務に込める思い
現存する天野自身が制作したネイチャーアクアリウム作品は、水景として残していくことはもちろんですが、それを観賞した方が自然を感じる機会となり、自然に対して少しでも考えるきっかけとなればいいと思っています。現在、管理を行っているすみだ水族館ではリピーターの方も多いのですが、初めて来館され、そのときが最初で最後のネイチャーアクアリウム体験となる方も多くいらっしゃると思います。そんな方々の中にも少しでも何かを残せたらという思いを持ちながら管理を行っています。
アトレ浦和プロントでの仕事
飲食店に設置された水景は、店内の雰囲気を高め、多くの方々にネイチャーアクアリウムを知っていただくよい機会にもなる。

 
「龍門杉の生命力」
構図はもとよりシダや苔の仲間がどういった場所に生えているのかなどを観察しながら自然を散策するとレイアウトのヒントが見つかる。

RELATED POSTS関連投稿

POPULAR POSTS注目の投稿