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TOP OF THE WORLD 2018 #01

aquajournaljpアクア・ジャーナル編集部
世界68の国と地域から1,977作品のご応募をいただきました「世界水草レイアウトコンテスト2018」。この連載ではトップオブザワールド2018と題し、その上位作品となるトップ7の作品をレイアウト制作者のインタビューとともに特集いたします。


THE INTERNATIONAL AQUATIC PLANTS LAYOUT CONTEST 2018
世界ランキング1位
GRAND PRIZE
半田 浩規
日本 / ゆるり

Aquarium Size / W120×D45×H45(cm)
「世界水草レイアウトコンテスト2018」の栄えあるグランプリは、日本の半田 浩規氏の作品が獲得しました。その作風はまさに王道であり、ネイチャーアクアリウムの創始者である天野 尚から薫陶を受けた半田氏ならではの作品と言えるでしょう。

当コンテストは“ネイチャーアクアリウム”コンテストではなく、あくまでも“水草レイアウト”コンテストです。そこには、コンテストを始めた天野の「水草レイアウトの可能性を見てみたい」という思いがあります。その可能性の一つとして正統派のネイチャーアクアリウムがグランプリを獲得したことは、何か節目のように感じられます。

 

水草













































































ニューラージ・パールグラス
ラージ・パールグラス
ショート・ヘアーグラス
ヘアーグラス
ブリクサ・ショートリーフ
エキノドルス・テネルス
エキノドルス・テネルス sp.“マディラ”
クリプトコリネ・ウェンティ・“グリーン”
クリプトコリネ・ウエンティ・“ブラウン”
クリプトコリネ・アクセルロディ
ミクロソラム・ナローリーフ
南米ウィローモス
ブラジリアン・クイルウォート
ソーシャルフェザーダスター
ニードルリーフ・ルドウィジア
ルドウィジア・オバリス
ポゴステモン・ダッセン
ディディプリス・ディアンドラ

魚種

















ラスボラ・エスペイ
サイアミーズ・フライングフォックス
ヤマトヌマエビ


 

Interview with the Grand Prize Winner
何か1つ絶対にブレないテーマを持ち続ける

Profile
年齢/45歳
職業/熱帯魚・水草レイアウト専門店 H2目黒店店長
アクアリウム歴/30年
過去の受賞歴/
IAPLC2003 142位
IAPLC2004 5位
IAPLC2005 112位
IAPLC2006 77位
IAPLC2007 5位
IAPLC2009 21位
IAPLC2010 23位
IAPLC2011 40位
IAPLC2012 71位
IAPLC2013 24位
IAPLC2014 14位
IAPLC2015 45位
IAPLC2016 20位
IAPLC2017 16位
AJ:今年のランキング結果を見たときの感想を聞かせてください。
半田氏:私はこれまでもこのコンテストに参加してきましたが、毎年、順位や評価のみならず、自分自身の中でスッキリする水景かどうかを一番に考えて制作するように心がけてきました。昨今はいろいろな技術を多用し、より複雑でインパクトのある作品を見受けることが多く、今年もそのような作品がメインになるとばかり思っていたので、届いた封書を開けたとき、まったく予想していなかった順位にただただ驚きました。何度も見返して確認しましたが、何度見ても不思議な数字で、正直、今でも信じきれていないような気がします。時の流れが移ろい、変わったとしても、そう簡単に自分の中の軸となるものは変えられず、毎年「これまで通り」の水槽を出品してきましたが、それが今年の審査員の方の目に留まって、今回このような名誉ある賞をいただくことができたのだとしたら、これまでブレずにやってきたことが功を奏したのかもしれないと、しみじみ感じています。幸運なことに、私は天野 尚さんの信念に触れられる機会が多く、天野さんがいかに生き物と水草との共存を大切にし、水槽の中で生態系を構築するという部分において重きを置いていたのかを肌身で感じることができました。それも今回の喜ばしい順位をいただくにあたり、十分な力添えをしてくれたのだと強く感じています。このような機会を与えてくださった皆さんに感謝の想いを伝えるとともに、ネイチャーアクアリウムを「誰もが気軽に楽しめる趣味」として世界に広めてくださった天野さんに、心より感謝の意を表したいと思います。

AJ:作品のテーマやアイデアについて教えてください。
半田氏:私は天野さんの掲げていたネイチャーアクアリウムの理念に感銘を受け、これまでもその想いを胸に水草レイアウトと向き合ってきました。今年もそれを意識してつくりましたが、唯一これまでと違ったことといえば、凹型構図ではなく三角構図でつくったということではないでしょうか。三角構図は水草や素材がよりダイナミックに見えることが多いので、そのリズムを壊さないように連続性を意識して植栽しました。クリプトコリネやシダ系など、アジア原産の水草を多く使ったために、魚もアジア原産で流木や赤系の水草にも劣らない、それでいて水景になじみやすいラスボラ・エスペイを選んでいます。これまでのコンテストの上位作品の流れからすると斬新さはないと思いますが、これまでと同じネイチャーアクアリウムの基本となる哲学を大切にしながら、これからも水草レイアウトを制作していきたいと思っています。

“ネイチャーアクアリウムの理念に感銘を受け、その想いを胸にレイアウト水槽と向き合ってきた。”


 

AJ:使用されているレイアウト素材について、教えてください。
半田氏:ADAから発売されている万天石とホーンウッドです。万天石はメインとなる流木の脇役として、クリプトコリネの葉の隙間から少し顔をのぞかせる程度に配置していますが、自分の中ではとても重要な存在として位置付けています。

AJ:水草レイアウトのどのようなところに魅力を感じますか。
半田氏:私は水草レイアウトは水草やレイアウト素材だけでは成り立たない世界だと思っています。そこに魚がいて、目に見えない微生物がいるからこそ生態系が巡り、水草や魚が元気に育ち、キラキラとした水の輝きが生まれるのだと思いますし、そのどれか一つがかけても、成り立つものではないのだと思います。それらをいかにバランスよく育てていくのかが難しいところですが、だからこそとてもやりがいのある、一番の魅力だと思うのです。
H2目黒店の店内には所狭しと水草と水草レイアウトが並んでいる。
AJ:上位入賞の秘訣などありますか。
半田氏:それはまったくもってわかりませんが、「何か1つ、絶対にブレないテーマを持ち続ける」ということは毎回自分で大切にしていることなので、今回はそれがよかったのかもしれないと思っています。

AJ:お気に入りのADA製品は何ですか。
半田氏:CO2添加やフィルター関連で使用するガラス器具たちはデザイン性と使用感を合わせてもとても美しいと思います。その透明感や清潔感を維持するためには細やかな心掛けが必要ではありますが、それは水槽の中に暮らす生き物たちへの心配りと同じで、魚や水草たちと同じように労ることで、生き物と共存することの深みや慈しみの想いが増すのではないかと思います。天野さんの生き物に対する気遣いが、一番深く込められているような気がするのです。
プロとして一人のアクアリストとして、天野さんの理念を大切にしたい。
AJ:今後どのようなレイアウトをつくってみたいですか。
半田氏:これはいつかの夢としてですが、いつか機会があれば、雨が降り山にしみ込んだ水が湧き出て小さなせせらぎとなり、小川となり川になり、川から海に流れ着く、そのバイオサイクルを投影させられるような水草レイアウトをつくってみたいです。

AJ:IAPLCについてどのように思われますか。
半田氏:コンテストは水草レイアウトという「趣味」を世界に広めるという観点で、とても有効なものだと思います。私自身アクアリウムを職業としていることもあり、普段はお客様のご要望に沿ったご案内をし、水槽制作もしています。それはそれで楽しみを共有できてやりがいがありますが、この1年に1度のコンテストに出品する水槽だけは自分の想いを存分に水槽に反映させる機会として、毎年とても楽しみながら取り組んでいます。生き物飼育という終わりない時間の流れの中で、5月末日という締め括りを楽しみ、味わえるのもこのコンテストならではなのではないかと思うのです。

 

連載
“TOP OF THE WORLD 2018”

世界68の国と地域から1,977作品のご応募をいただきました「世界水草レイアウトコンテスト2018」。この連載ではトップオブザワールド2018と題し、その上位作品となるトップ7の作品をレイアウト制作者のインタビューとともに特集いたします。

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